「セシール、あれから僕は不思議な夢を見たんだよ。」と、マシューは話しました。
「それは、ローズおばさんと一緒に話しあった後のこと?」と、セシールは聞きました。
「そうだよ。」と、マシューは答えて、
「先代の牧師様……。そう、ユリウス様が夢に出てきて、いろいろと教えてくれたんだ。」と話しました。
「ねぇ、今日は休日で良い天気ですし、一緒に散歩をしながら話しましょうよ。」と、セシールが言うと、
「それは良いね。」と、マシューは答えました。
そして二人は、エメラルドグリーンの森の傍で、キラキラと輝く清らかな小川に沿って歩くことにしました。
実は、今でもそれが、本当に夢の中のことだったのか?僕にもよくわからないんだよ。
夢の中の僕は、澄み切った青空の中、大海原が一望できる岬に立っていたんだ。
そして僕は空に向かって、「神はどこにいるのだろうか?」って、探しているんだ。
すると、「探し物は見つかったかな?」と、話しかけてきた人がいたんだ。
(もしかしたら、初めから、そこにいたのかもしれないけど……。)
僕はその人に、「僕は神の中にいるはずですが、まだ神を見たことがありません。」と、返事をした。
「確かに君の言うように、君は神の中にいるのだろう。そして君は、神を探しに外へ出かけたら、ここにたどり着いたというわけだね。」と、その人に聞かれたんだ。
それで僕は、「そうなんです。僕は未熟だから、まだ神を見つけることが出来ていません。」と、答えたんだ。
すると、「なるほど、君は自分が未熟だから、神を見つけることが出来ないと思っているようだ。」
「そして、努力をし、成長することで、いつか神を見つけることが出来る……。と、そう思っているのだね。」と、言われたんだ。
「そうです。だから僕は、この青空が広がる大海原までやって来て、神を探しているわけです。」と、答えたら、
その人は小さく笑いながら、
「失礼した。君の知っている牧師も、君と同じように迷っていることを思い出したのだ。」と言って、僕に顔を向けたんだ。
僕はその顔を見て、「ユリウス様!!」と、思わず声に出してしまったよ。
だって、ユリウス様は、もう何年も前に亡くなっているのだから……。
「マシュー、生命に終わりはないですよ。」と、セシールが言いました。
そうだったね、セシール。このまま話を続けていくね。
ユリウス様が、「ところで、『神と自分は一つであり、神の一部が自分である』ということについては、すでに学んできたと思う。」
「そして、『神は自分の中に存在している』ことについても、学んできたはずだ。」
「だから自分とは、『神の片割れ』と言うことが出来るであろう。」と話されたから、
「僕という存在は、『片割れの神』なのですね。」と、言ったんだ。
ユリウス様は、「それで良い。」と答えて、
さらに、「この大空の中を探し回らなくても、目を閉じ、静かに、自分の内側に心を向ければ、そこに神が存在しているのを感じるだろう。」と、話された。
僕は、「それは瞑想のことですよね。でも、瞑想で感じるのは、神ではなく、僕自身でしかないと思っています。」と、答えたんだ。
そうしたら、「まだ君は、わからないのか?それこそが、『片割れの神』ではないか……。」と言われたんだ。
セシール、そんなことが信じられると思う?
「そうですね……。でも、そう信じることで、『神と自分は一つである』と言えるのだと思います。」と、セシールは答えました。
セシールは、凄いね。
最初の僕は、成長をすることで、いつか自分の外に、神を見つけることが出来ると思っていた。
そんな僕でも、自分の中に、神が存在していることを知ったけれど、それでも成長しなければ、自分の中に神を見つけることが出来ないと思っていたんだ。
でも、セシールの言うとおりだね。
僕の中では、初めから、神と自分は切り離されてしまっていたんだ。
つまり、成長して(神?誰か?何か?に)認められるまでは、神と一つになることは出来ないと思っていた。
そのように僕は、無意識の中で、「人は神と一つではないし、一部でもない」という考えに染まっていたんだ。
心のどこかで、それが真実だと思っていた。
今まで僕は、「人は神の一部でありながら、成長し(神の要求に応え)なければ、神と一つになることは出来ない。」という矛盾した考えにすら、気がつかなかったんだよ。
だから未だに、「神とは、僕たちに何かしらの要求をし、それに応じた見返りをくれる存在である。」という幻想に取り憑かれてきたんだ。
「それは私もよ、マシュー。」と、セシールは優しく答えました。。
ありがとう。セシール……。
それでは、ユリウス様との話を続けるね。
「神の片割れよ!この世界の全ては、君の中に含まれている。」と、ユリウス様は話されたんだ。
すると僕の内側に、地球がすっぽりと入っているのが、心の目から見えたんだよ。
さらに、「そこには、過去も未来も現在も、今、君の中に存在している。」
「それがわかれば、時間と空間、さらにカルマも含めて、神の片割れである君の中に、世界の全てが含まれているのを感じるはずだ。」と、ユリウス様は話されたんだ。
それで僕は、「それは、とても素晴らしいことです。それが、神の愛なのですね。」と、答えたんだ。
「全ての君たちは、そのような存在であるのだから、たとえ出来が悪くても良いのだよ。」
「そして、今話したことを、君の知り合いの牧師にも伝えて欲しい。」と、ユリウス様は話されると、そのまま姿が見えなくなったんだ。
きっと僕たちは、これまで神に支配されていると思ってきたから、目に見えない、何かしらの恐怖を抱いてきたのだと思う。
けれども本当は、神にとても愛されているし、そもそも、神に見返りなんか求められていない。
さらに僕たちには、必要な全てのものが与えられているし、自由だって、僕たちに必要なだけ与えられているんだ。
僕たちは、神の愛を分かち合えさえすれば、もう、生きることに対して、何も恐れることはないんだ。
僕たちのそれぞれが、どのような世界にいたとしても、また、どのようなことがあったとしても、僕たちは、神の片割れであり、神とひとつであり続けるのだから……。