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求道者セシール


 「マシュー、私を誘ってくれてとてもうれしいわ。」

 

 「今日は、どんなお話が聞けるのかしら。それと、精神統一ってどんなのかしらね。」と、セシールが話しました。

 

 「君さえよかったら、いつでも声をかけるよ。」と、マシューは答えました。

 

 二人はこれから、精神統一の実践と仏の教えを聞くために、町はずれにあるセイエンの寺院に向かっているところです。

 

 「ところでセシールは、あの~……。」と、マシューが口ごもっていると、

 

 「マシュー、どうしたの?私に何か遠慮しているのかしら。」と、セシールが聞いてきました。

 

 「そういうわけではないのだけど、最近のセシールは、とてもキレイだし、輝いてみえるから……。」と、マシューは答えました。

 

 「あっ、ありがとう、マシュー。」と、セシールは言って、

 

 「私はね、自分がとても恵まれていることに気がついたのよ。」

 

 「つい最近まで、本当に辛い日々が続いたけれど、シスターや牧師様、それにセイエンさんにも、これから教えてもらうことが出来るし、マシュー、あなたも傍にいてくれるから……。」

 

      「それから、シスター・エリスから、求道者として生きるのなら、いつも敬意の念を忘れないようにねって……。」

 

      「それとね、目的と手段を取り違えないでね。何のために真理を求めているのか?ここが抜けたらダメよ、セシール。と教えてくれたのよ。」と、話しました。


 「他人がどう言っているか、どう考えているか、どうしようとしているのか、それはあなたには関係ないことです。大切なのはあなた自身が何を述べ、何を考え、何をするかです。神はあなたに他人の行為や言葉や思想にまで責任は取らせません。あなたの責任は、あなたに啓示されたものに照らして生きることです。光が大きければ、それだけ責任も大きくなります。この神の規約には免除条項というものはありません。」(シルバーバーチの霊訓(九)七章 魂を癒やす)

      

 「スピリチュアリズムというのは、いくつかの霊的真理の存在と意義と作用について与えられた名称に過ぎません。私にとって宗教とは生き方そのものであって、特定の信仰を受け入れることではありません。」(シルバーバーチのスピリチュアルな生き方Q&A)

 

 「スピリチュアリズムの教えが広まるということは、民族間の反目がなくなることを意味します。国家間のバリア、人種差別、階級差別、肌色による差別の消滅を意味します。その他、教会、礼拝堂、寺院、モスク(イスラム教の教会)、シナゴーグ(ユダヤ教の礼拝堂)などによる差別の消滅を意味します。なぜなら、それぞれ大霊の真理の一部を秘めており、他のいかなる宗教も、自分たちの宗教と根幹において矛盾しないことを理解するようになるからです。」(シルバーバーチのスピリチュアルな生き方Q&A)

 

 「それぞれの宗教に、大霊の真理の一部が秘められているのなら、お互いの理解と歩みよりが大切だと思います。」


    「特定の宗教を信仰するよりも、私は、私に啓示されたものに照らして生きていこうと思っています。」

 

 「そのためにも、マシューのように、もっといろいろとみなさんから学んでみようと思っているのよ。」と、セシールは心に決めて、マシューに語りました。


 「セシールは、そう思っていたんだね。」

 

 「僕はそれで良いと思うよ。」


    「セシール、僕も僕らしく生きていくよ。」


    「だって、僕は神の中にいると同時に、神は僕の中にいる。その間に、僕と神以外の何かを入れようとするから迷うんだ……。」と、マシューは答えました。