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マシュー、エリスに聞く


 「エリス、昨日、ベラさんの家の前で、辺境の牧師とみんなで話をしたんだ。」

 

 「その時、セシールが疑問に思ったことなんだけど、良かったら答えを一緒に考えてくれないかな?」と、マシューが話しました。

 

 「いいわよ、あなたのお気に入りの女性ですものね。」と、エリスは、にっこりしながら答えました。

 

 「まぁ、それは……、否定しないけど。」

 

 「セシールの疑問は、『永遠の命を人間がもともと持っているのでしたら、どうして、わざわざこの地上に生まれてくる意味があるのでしょうか……。』というものだけど、どうしてセシールは、こういう疑問を持ったのかな~?」と、マシューは質問しました。

 

 「マシュー、それは、直接セシールに聞いたら良かったと思うわ。」と、エリスは言いました。

 

 「そうなんだけど、セシールに声をかけようとすると、なんだか最近、緊張するんだよ。」と、マシューは答えました。


 セシールは、昨日から考えていました。

 

 ヨハネの福音書8章42節

 イエスは言われました。「神があなたたちの父であれば、あなたたちはわたしを愛するはずです。なぜなら、わたしは神のもとから来て、ここにいるからです。わたしは自分勝手に来たのではありません。神がわたしをお遣わしになったのです。」

 

  イエスは、「神のもとから来て、ここにいるからです。」と言われているから、イエスと同じように私たちも神の子だとしたら、「私たちも、神のもとから来て、ここにいるのです。」ということになります。

 

 それに、もともと私たちが神のもとにいたのでしたら、どうして、辛く、苦しみの多い地上世界にくる必要があったのでしょうか?

 

  「私には、その答えを与えることは出来ません。もし仮に、その答えがわかっていたとしても、それは私のために用意された答えであって、セシール、あなたのための答えではありません。あなたには、あなたのために用意された答えがあるはずです。」と、牧師様は話されていました。

 

 けっきょく、「自分で答えを探しなさい。」ということなのですね……。


 「マシュー、これは、私の感じたことでしかないのだけれど……。」と、エリスが言うと、

 

 「もちろん、それでかまわないよ。」と、マシューは答えました。

 

 「きっと、神さまは、私たちに『愛』というものを知ってもらいたかったのだと思うの……。」

 

 「そして、私たちみんなが、神さまの愛を知り、それをみんなで分かち合えるようになるためには、それに相応しい経験と成長が必要なのだと感じているわ。」

 

 「きっと、神の子である私たちが、親である神のようになりたいと願うなら、一度は親元から離れて成長する機会が必要だと思うのよ……。」

 

 「それにね、愛情にあふれた親の加護のもとで、何の不自由もない生活をして、毎日が幸せだと感じている時は、『何故、私は生まれてきたのだろうか?』と、セシールが抱いたような疑問を持たないと思うのよ。」と、エリスは話しました。

 

 「それって、セシールが辛く苦しい日々を過ごしているかもしれない。ってこと。」と、マシューは聞きました。

 

 「マシュー、あなたが成長しているように、セシールも、いつまでも可憐なままの女の子ではないということよ。」と、エリスが答えました。

 

 「うん、最近、ますます綺麗になったよ。」と、マシューは言いました。

 

 「アハハ、マシュー、あなたと話していると飽きないわね。」と、エリスは笑いながら話し、

 

 「今度、セシールを連れて、セイエンの話を聞きに行くといいわ……。」と、促しました。