みゅうちゃんと魔法の授業


 みゅうちゃんは深い眠りから目を覚ますと、辺りを見まわしました。

 

 みゅうちゃんの目に前には、見渡す限りの草原が広がっていました。

 

 よく目を凝らしてみると、とても大きな広場の先に、西洋風の幻想的な建物が見えてきました。

 

 みゅうちゃんは、その建物の前まで歩いて行きました。そして、しばらく様子を見てみました。

 

 すると建物の中から、魔法使いの姿をした女性が、みゅうちゃんの方に歩いてきました。

 

 「みゅうちゃん、お待たせしたわね」と、その女性があいさつしてきました。

 

 「もしかして、あんちゃん?」と、みゅうちゃんは、思わず声に出してしまいました。

 

 「私は、どこからどうみても、ビューティフルな女性魔法使いの先生ですよ。ねっ!」と、その魔法使いの先生は答えました。

 

 「う~ん、わかった。先生って呼ぶね」と、みゅうちゃんは言いました。

 

 「おりこうさんね」と、先生が言うと、

 

 「ところで、ここはどこなの?」と、先生に聞きました。

 

 「ここは、魔法の学校ですわ」と、先生は答えました。そして、

 

 「今日は、魔法の授業の日ね。これから、みんなのところに一緒に行きますわよ」と、先生が言うと、

 

 あっという間に、先生とみゅうちゃんのまわりに、十数名の生徒たちが現れました。

 

  「生徒のみなさん、今日は、空を飛ぶ授業の日ですよ」

 

 「空飛ぶほうきの人も、空飛ぶじゅうたんの人も、今日は一緒に、あの丘まで飛ぶ練習をしましょうね」と、先生が言いました。

 

 「は~い」と、生徒たちが返事をしました。

 

 みゅうちゃんも、元気に手を上げて返事をしました。

 

 「それでは、始めましょう」と、先生は言うと、空飛ぶほうきに乗って、あっという間に目的地の丘までたどり着いていました。

 

 それを見ていたみゅうちゃんは、「みゅうも、ほうきで飛んでみたかったのよ」と言いながら、ほうきにまたがりました。

 

 みゅうちゃんの空飛ぶほうきは、少し浮いたと思ったら、すぐに地面についてしまいます。何度やっても同じでした。

 

 「あれ~、みんなのように飛べないよ」と、みゅうちゃんは、残念そうに言いました。

 

 「まだ、上手くできないようね」と、先生がいつの間にか現れて言うと、何やら呪文のようなものを唱えました。

 

 すると、みゅうちゃんの目の前に、真っ白なペガサスが現れました。

 

 「先生は、魔法を使ったの?」と、みゅうちゃんは聞きました。

 

 「まぁ、私は魔法使いなわけですし、形から入るって、言いますわよね」と、先生は答えました。

 

 「だからなのね~、フフフ」と言いながら、みゅうちゃんは微笑みました。

 

 「コホンっ」と、先生は咳払いをして、

 

 「今日は、このペガサスに乗って、あの丘まで行ってみてね」と、みゅうちゃんに言いました。

 

 「は~い。みゅうは、落ちこぼれさんなの…。ペガサスさん、今日はよろしくね」と言って、ペガサスに乗って飛んでいきました。

 

 「うわ~、とってもたのしいね~。初めてのった気がしないよ。ペガサスさん、ありがとう」と、みゅうちゃんは、とても満足げな顔をして、ペガサスに話しかけました。

 

  遠くでそれを見ていた先生は、「上手く、女性になりきれていたのでしょうか?」と、見えない誰かにたずねると、

 

 「ええ、とっても……。見た目は上出来でしたよ。女性魔法使いの役は大変だったでしょうね、ご苦労様でした」


   「それから、ペガサスを呼ぶ時に使用した天使の言葉が、呪文に聞こえたようですね」


   「他のみなさんも、生徒の役をご苦労様でした」と、その人は答えました。そして、

 

 「ごほうびは、お気に召しただろうか?」という言葉を残して、その人の気配は消えてしまいました。

 

 一方、みゅちゃんを丘の上まで乗せたペガサスは、しばらくの間、空中をいろいろな方向に駆け巡ると、再び校舎へと戻りました。

 

 みゅうちゃんはペガサスから降りて、ペガサスのお腹をさすりながら、

 

 「ペガサスさん、また、一緒に飛んで行こうね」と、言いました。そして、

 

 「何だか、とても眠くなっちゃった」と言って、ペガサスの隣で横になると、今いる『夢の国』から、いつもの世界へと戻っていきました。

 

 「たまには、天馬で会うのも良いかもしれないね」と、そのペガサスは言いました。

 

 みゅうちゃんの枕元には、おじいさんとちいちゃんとの三人で観に行った、映画のパンフレットが置かれていました。