前回、大樹君は、おじさんの智也さんの力になりたいと努力しましたが、思うようにはいきませんでした。
そこで大樹君は、大樹君がまだ一才のときに他界した祖父に会って相談することにしました。
大樹君にとっては、お母さんのお父さんになります。
大樹君が知っている祖父の記憶は、写真の中にいる祖父の姿だけでした。
今、大樹君の前に姿を現した祖父は、写真よりもとても若く見えて、ちょうど、今のお父さんと同じくらいの年齢に感じられました。
「大樹はとても頑張っているね。私はとてもうれしいよ」と、祖父は笑顔で言いました。
「ねぇ、おじいちゃん。智也おじさんは、自責の念が強すぎて、ぼくだけでは力不足みたい。どうすれば良いかな?」と、大樹君が聞くと、
「まずは、大樹のお父さんに、智也さんの状況を伝えたらどうかな?そのためには、みゅうちゃんの力が必要となるね」と、祖父は答えました。すると、
「今まで、お母さんに伝えようと努力したけど、ダメだったからね」と、大樹君が言いました。
「私の娘ながら、いつもカン違いばかりだから、どうにも上手くいかない」と、祖父は言って、大きな声で笑いました。
大樹君が、そのようなやり取りを祖父としたあと、さっそく夢の世界で、みゅうちゃんと会うことにしました。
「おにいちゃん、たのみごとってな~に?」と、みゅうちゃんがたずねました。
「前に話した智也おじさんのことは、覚えているかな?」と、大樹君が聞くと、
「うん、おぼえているよ」と、みゅうちゃんは答えました。
「智也おじさんを元気づけたいけど、ぼくの力だけでは、とても時間がかかりそうなんだ。それで、みゅうちゃんにお願いしたいことがあるんだ」と、みゅうちゃんに話しました。
「みゅうは、何をすればいいの?」と、大樹君に聞きました。
「智也おじさんのことを、みゅうちゃんのおじいさんに知らせて欲しい。それから、俊哉おじさんを通して、ぼくのお父さんやお母さんにも、霊の世界にいる智也おじさんのことを伝えて欲しいんだ」と、大樹君が伝えました。
「それだけでいいの?」と、みゅうちゃんが聞くと、
「そうだよ」と、大樹君は答え、
「それと、ぼくのお父さんとお母さんに、『ぼくは恥ずかしくて今まで言えなかったけど、ぼくは元気だよ。二人をとても愛しているよ』って、伝えてくれるかな?」と、お願いしました。
「もちろんよ。おにいちゃん、みゅうにまかせてね」と、みゅうちゃんは、笑顔で答えました。
それから、いくにちかの日が過ぎました。
大樹君のお父さんとお母さんは、今の智也さんの状況に心を痛めたものの、大樹君から伝えれらた言葉によって、とてもなぐさめられました。
そして、大樹君のお父さんとお母さんは、心から智也さんの幸せを、神さまに祈りました。
さらに、わが子である大樹君の幸せを、心を込めて祈りました。
ちょうどその時、大樹君はおじさんの智也さんのところに、再び会うために来ていました。
「智也おじさん、ぼくのお父さんとお母さんの思いが伝わってきたでしょう。ぼくだって、おじさんの幸せを願っているよ」と、大樹君が伝えました。そしてすぐに、
「うぉ~っ、うぉ~っ」という泣き叫ぶ声が、智也さんを覆っている世界に響きわたりました。
そのとき、いたわりと思いやりに満ちた光の思いが、智也さんのすべてを包み込むようにして、世界に広がっていきました。
「自分の死を受け入れ、霊の世界にやって来ても、少しも前に進めない者がいます」
「地上でやり残したことは、こちらの世界でも出来ます。けれども、地上へのさまざまな未練は、なかなか消えるものではありません」
「地上と霊界とを結ぶ橋渡しによって、お互いの愛を運び、傷ついた心を癒していきます。そして、暗闇の世界に光をもたらし、止まった時を再び動かす力となります。それは、地上と霊界の双方にとって、かけがえのない架け橋なのです」
「感謝します。地上と霊界を結ぶ架け橋となる者たちよ」
「さぁ、進みなさい。愛するわが友よ」という思いの言葉が、どこからともなく伝わってきました。
気がつけば、大樹君は涙を流していました。
さらに、今まで智也さんを覆っていた、どんよりと重苦しい世界が、パーッと明るくなって、とても軽やかなものになっていました。
「私も、大樹の家に行っていいか?」と、笑顔を取り戻した智也さんが、大樹君にたずねました。
「もちろん良いですよ」と、大樹君は答えました。
「大樹も頑張っているのに、わたしは恥ずかしいよ。本当にすまなかったね」と、智也さんが謝ると、
「おじさんが元気になって、とてもうれしいよ」と明るい声で、大樹君が答えました。そして、
「ぼくは、人と霊とが協力し、助け合うことが大切だって教わってきたよ」と、大樹君は笑顔で智也さんに伝えました。