俊哉さんと夢の中の女性


 これは、みゅうちゃんがおじいさんと、大樹君の叔父の俊哉さんの家に遊びに行ったときのお話です。

 

 「今日は、わざわざお越しいただいて、ありがとうございます。おじさんも、お元気そうで何よりです。それから、あなたが孫のみゅうちゃんね。夫の俊哉から話を聞いていたけど、小っちゃくって、可愛いわ~」と、俊哉さんの奥さんがあいさつをしました。

 

 「こんにちは、みゅうです。今日はよろしくお願いします」と、みゅうちゃんもあいさつし、

 

 おじいさんも、「今日は、お邪魔になります」と、答えました。

 

 「まぁまぁ、気楽に行きましょうよ」と、俊哉さんが言うと、

 

 「それ、自分が自分に言ってるの?」と、奥さんが言いました。

 

 「まったくだ」と、おじいさんが言って、笑いました。

 

 そのようなやり取りがあったあと、みんなで居間に移り、お茶を飲みながら話をすることになりました。

 

 みゅうちゃんには、ミルクティーと大樹君が好きだったという洋菓子が出されました。

 

 「それでは今回、私が夢の中で体験した話をしようと思います」と言って、俊哉さんが話し始めました。

 

 「寝ている時に、自分が夢の世界にいることに気づいたのは、これまでにも多々ありました。けれども夢の中で、私とは明らかに違うエネルギーを感じた体験は、今までにはなかったことです」と、俊哉さんは言って、

 

 「その時の夢の世界では、超高層ビルが立ち並ぶ大都市の中に私がいました」

 

 「その都市は、すべてが超高層ビルなどの超大型の建物に囲まれていて、どこを見渡しても、大きな建物しかないように感じました」

 

 「外にいると、それなりに明るく感じたので、昼間だったと思います。道路もかなり広くて、建物が大きすぎること以外は、地上世界と変わらないように感じました」

 

 「そして、ふと気づいたら、私は病院の中の通路を歩いていました。理由はわからないのですが、ここが超大型の病院の中であることを理解していました。その時の私は、50階建て以上の大病院の中間あたりにいるようでした」

 

 「しばらくの間、私は通路を歩いていましたが、何となく窓から外が見てみたいと思って、窓を探しましたが見つかりませんでした」

 

 「そして、どうしたものか?と、思案していると、通路の先から一人の女性がやってきました」

 

 「その女性は30歳くらいに見えましたが、もっと若いようにも見えました。背はそれほど高くはありませんでした。髪は肩くらいまであり、愛くるしくもあり、なかなかの美人にも見えました」

 

 「私にとっては、今まで感じたことのない、とても魅力のある女性でした。だからと言って、その女性に恋愛感情のようなものや邪な欲求などが、まったく芽生えないのは不思議でした。それは今でも変わりません」と、一通り語り終えました。

 

 「それから、それから」と、みゅうちゃんは聞きました。

 

 「私からは何も言わなかったのですが、その女性は私の疑問に答えるように、次のように伝えてくれました」と、俊哉さんは話し、

 

 「あなたのことを(~から)聞いて、あなたのことを知ったのよ。それで私は、とてもあなたに興味を持ったの。だから、今日、私はあなたに会いにここまで来たのよ。地上世界で霊の話を広めようとする人って、どんな人なんだろうって思ったからよ。と、その女性は教えてくれました」

 

 「その女性が、私のことを誰に聞いて知ったのか?たぶん、このままわからないままだと思います。けれども、その女性から感じられるエネルギーは、私には存在しない異なったエネルギーで満ち溢れていることがわかりました」

 

 「それで私は、『あぁ、こういうエネルギーの人も存在するのか~』と、妙に納得している自分に気がつきました」と、語りました。

 

 「浮気しようなんて、思ったらダメよ」と、からかうように奥さんが言うと、

 

 「もちろん、わかっていますよ」と、俊哉さんは答え、

 

 「今になって、改めて思い出すと、そもそも、あの女性に性別があったのだろうか?矛盾するけど、そう感じています」と、俊哉さんが言いました。

 

 「もしかしたらスピリットというのは、相手に合わせて、相手が望む姿で現れるものなのかもしれんのう」と、おじいさんが言うと、

 

 「みゅうも、おにいちゃんの偽物を見たよ」と、俊哉さんの顔を見て言いました。

 

 「そうだったね。良いか悪いかは別として考えても、相手の望む姿で現れることができるスピリットがいるということだね」と、俊哉さんが話しました。そして、

 

 「我々を巧みに騙そうとするスピリットもいるということだ。我々も今まで以上に気をつけねばならないようだ」と、おじいさんが語りました。


    「そう思います。それに、神や仏、天使や精霊、スピリットなどと呼ばれる存在は、それを見る人の中にある概念によっても、見え方が変化するように感じました」と、俊哉さんが話すと、

 

 「みゅうも、もっと気をつけるよ」と言って、この話は終わりました。