みゅうちゃんとゆきさん


 「今日は、ゆきさんから聞いた話をする前に、ゆきさんについて話そうと思う」と、おじいさんは、みゅうちゃんに話しはじめました。

 

 「なぜなら、ゆきさんは、みゅうちゃんと同じように、寝ている時に、霊の世界をいろいろと見てきた人だからだよ」と、言いました。

 

 「それで、それで、」と、みゅうちゃんは答えて、次の言葉を待ちました。

 

 「ゆきさんは、もともと霊的なことを学んできた人だけど、わしと俊哉と会っていた頃は、たぶん特別な霊能力はなかったと記憶している」

 

 「一昨年会った時、ゆきさんの愛する人が地上を去ってから、霊能力が発揮されたと聞いた」

 

 「愛する人を地上世界から失ったことと、霊能力が発揮されることとの関係があるとすれば、それは、二人のあいだにある愛だとわしには感じる」と、おじいさんは語りました。

 

 「愛って、お父さんとお母さんみたいに結婚すること?」と、みゅうちゃんは聞きました。

 

 「そうとも言えるけど、そればかりではない」と、おじいさんは答え、

 

 「もっと大きな意味があるのだが、いやはや困った」

 

 「う~ん、そうだの~」

 

 「今は、とても大切に思えて好きな気持ちを、愛と呼ぶことにしようと思う。それで良いかな?」と、おじいさんは言いました。

 

 「わかった。家族のことが好きなのも愛だよね」と、みゅうちゃんが言いました。

 

 「その通り。みゅうちゃんも経験したように、地上の人と霊の人とを繋ぐ絆は、愛と呼ばれるもので、それは、いたわりや慈しみの心だと感じている」

 

 「それは、みゅうちゃんと龍のまるちゃんとを繋いでいる絆も、わしは変わらない思う」と、おじいさんは話し、

 

 「ゆきさんの場合は、もともと霊能力を発揮する素質があったのかもしれない」

 

 「それでも、お互いが抱く愛の絆が、人と霊とを繋ぐ通路となり、そこに霊の力が働くことによって、霊能力が発揮された可能性が大きい」と、みゅうちゃんに語りました。

 

 「愛は力となるんだね。思いやりは大切だね」と、みゅうちゃんが言いました。

 

 すると、「みゅうちゃんは、とても賢いね」と、おじいさんは感心したように言いました。

 

 さらに続けて、「類は友を呼ぶという言葉を聞いたことがあるかな?」と、おじいさんは質問しました。

 

 「聞いたことあるよ。似た者同士だから、いつも一緒にいるってことでしょう」と答え、

 

 「前に、おばあさんが、あの夫婦は似た者同士だから、いつもケンカばかりしているって言うわりには、いつも一緒に散歩しているのよね。本当にケンカなんかしているのかしら」と、みゅうちゃんはおばあさんのマネをしました。

 

 おじいさんは、笑いながら、

 

 「気の合う者や似た者同士は、自然と集まるものだけど、それは、地上の世界も、霊の世界も、同じなんだよ」と、おじいさんは話し、

 

 「だから、憎しみとか恐怖心とかを抱いてしまうと、同じような憎しみとか恐怖心を抱いたものを、自分に集めてしまうのだよ」と、語りました。

 

 「愛は愛を呼び、憎しみは憎しみを呼ぶ。人よ、恐れるな!」と、みゅうちゃんが力強く言うと、

 

 おじいさんが「みゅうちゃん、どこでそれを覚えたんだい?」と、聞きました。

 

 「う~ん、どこだったかな~」と、みゅうちゃんが答えると、

 

 おじいさんが、「その言葉は、きっと、これからのみゅうちゃんに必要なものなのだろう」と話すと、優しいまなざしでみゅうちゃんを見つめるのでした。