おじいさんとインスピレーション


  次の日の朝、「みゅうちゃんに、昨日の宿題の提出をしたいのだが……」と、おじいさんは言いました。

 

 「おじいさん、もう出来たの?」と、みゅうちゃんが驚いていると、

 

 「わしも、みゅうちゃんのようにはいかないが、寝ている間にスピリットたちと勉強をするのだよ」と言って、

 

 「これが本当の睡眠学習っていうやつだ」と、おじいさんが笑うと、

 

 「何か、変なのに影響されたの?」と、冷静な声で、みゅうちゃんは答えました。

 

 「いやいや、それでは宿題を提出するとしよう」と、おじいさんは気持ちをきりかえて、

 

 「じつは昨日、神さまで、あまりふざけすぎるのも、どうかと思うが?という、インスピレーションがきての、とてもお堅い方もいるので、まったく冷や汗ものだ」と、おじいさんは言って、

 

 「そうそう、宿題は、霊的に目覚めるという意味と、どうして、宇宙の果てまで知られて、みんなが喜ぶことになるのか?だったね」と、語り始めました。

 

 「聖書の、ルカの福音書12章6節に、

 

 『五羽の雀が二アサリオンではないか。だが、その一羽さえ、神がお忘れになるようなことはない。』とある。

 

 アサリオンとはお金のことで、一日分の労賃が一デナリオンとなり、一アサリオンは、その十六分の一なのだ。

 

 これがマタイの福音書では、雀の値段が二羽で一アサリオンであるから、本来ならば二アサリオンで四羽のはずだ。だから、その一羽はおまけの雀なのだ。神は、たった一羽のおまけである雀でさえも忘れることはないという話がある」と話しました。

 

 「それは、聖書の中のおはなしね」と、みゅうちゃんが言うと、

 

 「今度は、シルバーバーチの言葉を借りて、話してみよう」と、おじいさんは言いました。

 

 「神は一羽の雀がいつ落ちるのかをご存じだといわれています。」

 

 「この地上には数え切れないほど多くの人々が住んでいて、霊界に旅立った無数の人々もいるのに、どうして神は、一人ひとりに起こることをすべてご存知なのでしょうか?と、シルバーバーチは語った」

 

 「みゅうちゃんには、その答えがわかるかな?」と、みゅうちゃんの目を見ながら聞きました。

 

 「それは、かみさまの中にみんながいるから」と、みゅうちゃんは答えました。

 

 「そうだとも。だから神さまは、すべてのあらゆることを、ご自分のことのようにご存じだ」と、おじいさんは言って、

 

 「宇宙に存在するあらゆるものの一つ一つが、神さまにとっては、ご自分でもあるのだ」

 

 「だから雀は、神さまご自身でもあるから、雀のことを知っているのは、当然のことなのだ」

 

 「そして、すべての人々も、神さまにとっては、ご自分の一つ一つでもあるけれど、だからといって、神さまの操り人形とはならないのだよ」と、語りました。

 

 「それは、何となくわかるような気がする」と、みゅうちゃんが言うと、

 

 「もしも、神さまから見るとすれば、みゅうちゃんも神の一部であるわけだ」

 

 「だけど、みゅうちゃんから見れば、みゅうちゃんはみゅうちゃんであり、けっして神さまの操り人形ではないのだから、神さまがいるのは、みゅうちゃん自身の中にいるということだ」と、おじいさんは話しました。

 

 「そっか~。みゅうは、かみさまの中にいて、かみさまは、みゅうの中にいる。ふしぎよね~」と、みゅうちゃんは、答えました。

 

 「霊的に目覚めるとは、そのように、神さまの中に自分がいて、自分の中に神さまがいることを知ることから始まる」

 

 「つまり、自分という存在は、地上の死によって消えて無くなってしまう肉体ではなく、未来永劫生き続けていく霊である」と、おじいさんは語り、

 

 「だから、たった一人であっても、自分は霊であると自覚できたら……、わしではとても言い表すことなど出来ないのだが……。きっと神さまにとっては、永遠に失ったと感じられた、ご自分自身の片割れを取り戻したような、そんな気持ちなのだろう」と、話しました。

 

 「みゅうも、おにいちゃんのときにそう思った」と、話すと、

 

 すると、「ありがとう」という大樹君の声が、みゅうちゃんには聞こえたような気がしました。

 

 「これで、宇宙の果てまで知られて、みんなが喜ぶことになる。という宿題も終えて良いかな?」と、おじいさんが聞くと、

 

 「みゅうはね、本当は、おじいさんのことは、じぃちゃんずに聞いてみようか?って、言いたかったけど、今回はおふざけなしにする」と言うと、

 

 「みゅうちゃん、わしが悪かった。言葉に出ている時点で、もうアウトだよ」と、おじいさんが言うと、

 

 「でも、よいお勉強になったよ。おじいさん、ありがとう」と、みゅうちゃんは、おじいさんに感謝しました。