おじさんとゆきさん


 おじいさんは、みゅうちゃんと一緒に朝食を食べ終わると、二人で縁側に行きました。

 

 二人とも縁側に座り終えると、おじいさんは、大樹君のおじさんの知り合いの、ゆきさんについて話し始めました。

 

  「ゆきさんは、もともとおじさんの家の近くに住んでいて、おじさんとゆきさんは同じ学校に通っていたのだ」

 

 「年は、おじさんよりゆきさんのほうが一つ上だったが、お互いに子供の頃から心霊に興味があったらしく、仲が良かったようだ」

 

 「やがて二人は大人になり、ゆきさんは好きな人と結婚することになって、遠くの町へ引っ越したと聞いている」と、おじいさんは説明してくれました。

 

 みゅうちゃんの反応を見ながら、おじいさんは続けて話しました。

 

 「それで、一昨年の夏、この町の隣のさらに隣の大きな町で、定期的にミディアムシップが開催された」

 

 「ゆきさんは、それに参加するためにこちらに来たらしい。おじさんも一緒に参加したそうだ」とおじいさんは言いました。

 

 「ミディアムシップって、なんなの~?」とみゅうちゃんが質問しました。

 

 「わしも詳しく説明できないのだが、どうやら、大樹君のように地上を去った、霊の世界にいるスピリットと連絡を取り合うことのようだ」

 

 「そういうことが出来る能力を持った人がいるらしく、費用はかかるが、おじさんとゆきさんは、そこで勉強をするために参加したそうだ」

 

 「ふ~ん、そうなんだ」と、みゅうちゃんは言ってから、

 

 「おじいさんも、妖精さんや精霊さんが見えるから、ミディアムシップっていうのかな?」と、質問しました。

 

 「大樹君のおじさんから、どうやら、わしのはチャネリングだと言われている」と、おじいさんは答えました。

 

 「わしがまだまだ若い頃は、どちらも同じように霊能者と呼んでいて、霊媒(英語でMedium ミディアム)と、超能力(英語でPsychic サイキック)との区別はあったが、ミディアムシップとチャネリングという言葉は、大樹君のおじさんから教えてもらった」と、おじいさんは説明しました。

 

 「むずかしいね」と、みゅうちゃんは言うと、

 

 「そういえば、おじいさんは、何でそういうことを知っているの?」と、聞きました。

 

 「わしも子供の頃から、みゅうちゃんのように龍が見えていたから、先代の、今はもう他界されている神社の宮司さんに、若い時からいろいろ話を聞いてもらったり、いろいろと教えてもらったりした」

 

 「わしには、その宮司さんから霊が見えることを教えてもらったが、なるべくみんなには知られないようにしていたらしい」

 

 「それで、その宮司さんがいろいろな本を貸してくれて、読んでみるようにと言われたのが、霊に関する本だったわけだ」と、おじいさんは教えてくれました。

 

 「なんだか、おにいちゃんとおじさんみたいだね」と、みゅうちゃんは言いました。

 

 「そうだね」とおじいさんは答え、

 

 「大樹君がおじさんの俊哉からいろいろと聞いていたように、昔は俊哉も、わしからいろいろと聞いていたんだよ。俊哉と一緒に、ゆきさんも顔を出したことがあった」

 

 「今では、わしよりも俊哉のほうが、霊の世界について詳しくなったから、逆にわしが教えてもらうようになってしまったがの」と、おじいさんは話しました。

 

 「ところで、おにいちゃんのおじさんは、俊哉っていうの?」と、みゅうちゃんが言うと、

 

 「そうだよ。あっ、言ってなかったか?」と、おじいさんは、何だかあわてたように言いました。

 

 「たぶん、言ったのかもしれないけど……気がつかなかった」と、みゅうちゃんが言うと、

 

 おじいさんが「本当は、わしが照れくさくなって、言えなかったのだよ」と、苦笑いして答えました。

 

 「それにな、霊の話もそうだが、妖精や精霊の話をするだけで、まだまだ変な目で見られることも多い世の中だ」

 

 「だから自分が見たことや聞いたこと、あるいは感じたことが、他人と違うという理由だけで、妄想や病気とされてしまうこともある」

 

 「ときには、そういうこともあるだろうが、せっかくの能力を伸ばすことが出来ずに、妄想や病気とされてしまうのは残念なことだ」と、おじいさんは語りました。

 

 「もしかしたら、みゅうもそうなっていたのかもしれないね」と、言うと、

 

 「みゅうちゃんは、心がきれいだから大丈夫。何よりも、わしはそれが大切だと思っている。それに加えて、より多くの知識があった方が良いと思っている」と、おじいさんは話しました。

 

 「そうなんだ」と、みゅうちゃんは言いました。

 

 「残念なことに、この世の中には、嘘をついたり、人を騙したりする人がいる。そして、大樹君のように、光の世界に帰った霊とは違って、もとの世界に帰れずに、この世の中にとどまって、悪さをする霊もいる」

 

 「なんだか怖いね」と、みゅうちゃんが言うと、

 

 「心配はいらないよ。みゅうちゃんが人と助け合うことを忘れなければ、霊の世界でも同じように、みゅうちゃんと助け合おうとする霊がそばにいてくれるから」と、おじいさんは話し、続けて、

 

 「そうは言っても、いつかわかるだろうが、辛く苦しいことも必要な経験なのだよ」と語りました。

 

 「おじいさんは、それだけ苦労をしたもんね」と、みゅうちゃんは言いました。

 

 おじいさんはちょっと驚きながらも、「ありがとう」と言って、みゅうちゃんの中から感じる魂の片鱗に気がついたのでした。