満開の桜で彩る四月、みゅうちゃんの胸のなかに残る痛みは、まだ完全には癒えないものの、舞い落ちる桜の花びらと、それによって敷き詰められた桜色の絨毯、そして、透き通るような青空が、みゅうちゃんの心を元気づけるのでした。
みゅうちゃんは、ちょっと不思議な女の子なのかもしれません。
みゅうちゃんは、時々、とても大人びたように見えます。
それは、今までおじいさんやたっくんから、いろいろと不思議なお話を聞いてきたからかもしれません。
きっと、みゅうちゃんは、次のことを学んできて、それを自覚しているからだと思います。
このみゅうと呼ばれている肉体は、本当の自分が身に付けている衣服のようなもので、この肉体の中で意識として感じている自分が本当の自分であること。
つまり本当の自分とは、鏡で見える肉体としての自分ではなく、目には見えないけれども、確かに実在していること。
肉体による死とは、肉体という衣服を脱いで、新しい衣服に着がえるようなもので、本当の自分はそのまま永遠に生き続けていくこと。
そして、本当の自分とは、「霊、英語で Spirit(スピリット)」と呼ばれていて、その霊の知識を学ぶことがとても大切であること。
「鏡に映っているのは、本当のみゅうじゃないのかな?たしかに、心は鏡に映らないし、目には見えないけど……」
「他にもたくさん、目に見えないものがあるんだろうな~」と、みゅうちゃんはあれこれと考えるのでした。
その日の夜、みゅうちゃんが眠りにつこうとした時、部屋の中で一人の男の子が立っていました。
「おにいちゃん……」と、みゅうちゃんは心の中で声を出しました。
学生服姿の大樹君は、何も言わずに、ただ優しいまなざしを、みゅうちゃんにむけるのでした。
そして、いつのまにか、みゅうちゃんは眠りについていました。