夏も終わりに近づきました。
みゅうちゃんは、いつもより朝の空気がひんやりしているのを感じました。
今日、大樹君が、おじいさんとみゅうちゃんと話をするためにやってきます。
みゅうちゃんは、このまえ経験した不思議な出来事について話そうと思いました。
そして、「今日は何の話をするのかな?」と、あれこれと考えていました。
それから少し経ってから、「おはようございます」と、たっくんの声が聞こえてきました。
おじいさんが大樹君を家に招き入れると、みゅうちゃんも「おにいちゃん、おはよう」とあいさつしました。
おじいさんは、「おじさんとおばさんは、元気だったかな?」と、たっくんに聞きました。
たっくんは、「みんな元気だったよ。ただ、従妹のお姉ちゃんの愚痴に、しばらく付き合わされたけど」と、答えました。
そして、「実は、おじさんから一冊の本を借りていて、じっくり読むように言われたんだ」と言って、たっくんは、二人の前にその本を見せました。
それは、「古代霊は語る」(近藤千雄訳編)という本でした。さらに、「シルバー・バーチ霊訓より」と表紙に書かれていました。
その本の表紙をめくると、マルセル・ポンサンによる心霊絵画で、「シルバーバーチ」と呼ばれる、アメリカ・インディアンの肖像画が目に入りました。
みゅうちゃんは、思わず、「これだ~」と、大きな声を出して言いました。
「ほら、あそこに写真が飾ってあるけど、その写真の髪が三つ編みになって伸びていったの」
「まるで女の子みたいだねって思ったら、今度はインディアンの姿になっていたの」と一気に話しました。
さらに、「今日は、おにいちゃんにそのことを話そうと思っていたんだよ」と、続けて言いました。
おじいさんは、「そんなことがあったのか」と言って、まだ若い頃に他界した、おじいさんの弟の写真を見つめるのでした。
おじいさんに続いて、「そうだったんだ。龍のまるちゃんが言っていた準備って、この本を読むことなのかもしれないね」と、たっくんは言いました。
さらに、「僕もきっとそうだったんだ……」と、ひとりごとのように言いました。
「古代霊は語る」の本のはじめに、実はそのインディアンがシルバーバーチその人ではないと書かれています。
インディアンは言わば霊界の霊媒であって、実際に通信を送っているのは上級神霊界の高級霊で、直接地上の霊媒に働きかけるには余りに波長が高すぎるので、その中継役としてこのインディアンを使っているのです。と書かれています。
するとみゅうちゃんが、「おじいさんから、おにいちゃんへ、おにいちゃんから、みゅうへ、伝言ゲームだよ」と言いました。
「みゅうちゃん、伝言ゲームとは、なかなかおもしろい発想だね~」と、おじいさんが笑って言いました。
「そう、しるばーばーちさんは、神さまと、みんなとの間の伝言係をしているんだよ」と、みゅうちゃんは言いました。
おじいさんの心の中に、過去に聞いた聖書の言葉がふとわきおこりました。
その言葉は、ルカによる福音書 18章15~17節 にあります。
イエスにさわっていただくために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちはそれを見て、彼らをたしなめた。
するとイエスは幼な子らを呼び寄せて言われた「幼な子らをわたしのところに来るままにしておきなさい、止めてはならない。神の国はこのような者の国である。よく聞いておくがよい。だれでも幼な子のように神の国を受け入れる者でなければ、そこにはいることは決してできない」