みゅうちゃんと白猫のなみちゃん


 その日は朝から、とても良く晴れていました。

 

 ほどよい風と、ポカポカとした日差しで、外に出るだけで気持ち良く感じられます。

 

 みゅうちゃんは、おじいさんと一緒に神社に行くことにしました。

 

 週に二回、おじいさんは山のふもとにある神社の境内を掃除するために出かけます。

 

 いつもは一時間ほど歩いて行くのですが、みゅうちゃんと一緒の時は、軽トラックに乗って行きます。

 

 みゅうちゃんのお目当ては、白い猫のなみちゃんです。

 

 白猫のなみちゃんは、いつも、お神輿が納められている小さな宝物殿の前でくつろいでいます。

 

 みゅうちゃんは、白猫のなみちゃんが大好きです。おっきな体のわりには、鳴き声がかわいいのです。

 

 おじいさんは、「かみさまにご挨拶はすんだのかい?」と、みゅうちゃんに聞きました。

 

 「ま~だ~」と、みゅうちゃんは答えます。

 

 みゅうちゃんは、「これからする~」と、言いながら、さっそく白猫の姿を探すために走り回っています。

 

 それほど大きな神社ではないけれども、みゅうちゃんにとっては、じゅうぶんに広く感じるのでした。

 

 「み~つけた」と、みゅうちゃんが言うと、白猫のなみちゃんは、いつもの宝物殿の前に座って毛づくろいをはじめました。

 

 みゅうちゃんは、「今日もかわいいね~」と言ったあと、「あれっ」と宝物殿の中にあるお神輿から、しばらく目が離せなくなってしまいました。

 

 「お神輿の中がひかってる」と、みゅうちゃんは小さな声で言いました。

 

 その時、「ゆっくりしていきなさい」と、みゅうちゃんには聞こえたように感じました。

 

 「なみちゃんなの?」と、みゅうちゃんは聞きました。

 

 白猫のなみちゃんは、じっと、みゅうちゃんを見ています。

 

 今度は、「もういちど、お参りしていきなさい」と、白猫のなみちゃんから聞こえてきました。

 

 「まだ、かみさまに挨拶していなかったね~。ごめんなさい」と、みゅうちゃんはあやまりました。

 

 そして、ふと、みゅうちゃんが空を見上げると、なぜか雲がなみちゃんの姿になって、こちらを見ているのでした。

 

 おじいさんとの帰り道、軽トラックに揺られながら、みゅうちゃんは、今日あったふしぎな出来事について話しました。

 

 おじいさんは、それを「そうか、そうか」とあいづちを打ちながら、嬉しそうに聞いていました。

 

 みゅうちゃんは、「これが夢だったらどうしよう」と言って、自分のほっぺをつねってみました。

 

 「いたかった」と、おじいさんに言うと、ふたりで笑いました。