その日は、少し暑く感じる程度の良く晴れた日でした。
その夜のことです。
みゅうちゃんは、お父さんとお母さん、それと妹のちいちゃんと一緒に、少し離れた所にある蛍の池に遊びに行きました。
その池は、こぢんまりしていて、いろいろな虫たちがいるので、まるちゃんのお気に入りの場所です。
「あっち、あっちがひかってる」と、ちいちゃんがおねえちゃんのみゅうちゃんに言いました。
ちいちゃんは、みゅうちゃんより、もっとちいさな女の子です。
「ふたつ光っているね」と、お母さんが言いました。
「きれいだね~」と、お父さんも答えます。
「ねえ、もうひとつ、あっちにいったりこっちにいったり、いそがしそうな光があるね」と、みゅうちゃんが言いました。
「どこ、どこ~、ちいちゃんには見えない」と、ちいちゃんが困ったように言いました。
お母さんは、「みゅうちゃんが見たのは、バッタだと思うよ」と言いました。
「バッタか~」と、ちいちゃんは答えました。
お父さんは、なぜか笑っているだけでした。お父さんは、みゅうちゃん以外にも、このようなことを言う人が身近にいるからです。
家に帰って、みゅうちゃんは、蛍の池のできごとをおばあさんに言いました。
おばあさんは、「それは、きっとカナブンだよ」と教えてくれました。
みゅうちゃんは、なんとなく自分が見てはいけないものを見てしまった気持ちになりました。
その日は、ちょっと悲しい気持ちのまま、眠ってしまいました。
「わたしは、悪い子なのかな~」みゅうちゃんのほっぺに一滴の涙がこぼれていました。
夢の中で、「みゅうちゃん、ぼくはいつでも応援しているよ」と、龍のまるちゃんは語るのでした。
次の日の朝早く、みゅうちゃんは、おじいさんに昨日の光についてたずねました。
「それはね、きっと妖精さんだよ」と、優しいまなざしでおじいさんが答えました。
「おじいさんが話してくれた妖精さん?」と、みゅうちゃんは聞き返しました。
「そうだよ。妖精さんは、とっても恥ずかしがりやさんだから、みゅうちゃんにしか見えなかったんだよ」と、おじいさんは答えました。
「そっか~。だから、みんなには見えなかったんだね」と、みゅうちゃんはやっと安心しました。
みゅうちゃんが外に遊びに行った後、おじいさんは、「そろそろ、みゅうのために、あの子を紹介するとするか……」と、ひとりごとのようにつぶやくのでした。