物欲のみで霊的なものに関心を示さなかったスピリット


●妻に自殺を促す『唯物的現実主義者』
 霊的なものを否定し、無感動・無関心の性格のまま地上生活を終えた人間が、死後、絶望と暗黒と当惑に苦しめられ、無意識にうちに人間に憑依してしまっているケースがよくある。
 我々夫婦と顔見知りのF・W夫人は、ニューヨーク在住で、幸せな、ごく平凡な結婚生活を送っていた。奥さんの方はもともと霊的なものに理解があったが、ご主人の方は徹底した唯物的現実主義者で、『なるようにしかならん』といった運命論者的な人生観しかもっていなかった。ただ、夫婦仲はいたって良かった。それが、皮肉にも、悲劇の誘因となるのだが・・・。
 ご主人は、宗教というものには一切関心がなく、死はすべての終わりであると信じ込んでいた。そして、奥さんに対して、もしお前が先に死んだら、俺はあとを追って自殺すると言い、もし俺が先に死んだら、お前も自殺して死んでくれ、などと言っていた。が、奥さんは取り合わなかった。
 そのご主人が、ちょっとした病気がもとで、あっさり死んでしまった。が、死んだ後も奥さんにつきまとい、夜になると起こして、早く死ね!と脅すので、奥さんは寝られなくなってしまった。
 自分の置かれている事情が分からないながらも、彼は何か変わったことが起きたらしいことは感じていた。奥さんと自分とを隔てている何ものかを取り除こうと必死だった。そして、しつこく奥さんにこう迫るのだった。
 「自殺するんだ!俺のところへ来い!俺はお前がいないとダメなんだ。どうしてもお前が欲しいから、早く死んでくれ!」
 この『自殺しろ』の叫び声が昼も夜も耳から離れないので、F・W夫人は身の危険を感じ、自分が発作的に何をしでかすか分からないと案じて、ついにシカゴの我々のもとに助けを求めてきたのだった。
 事情を聞いているうちに、そのご主人が私の妻に乗り移った(霊団が乗り移らせた)。そして、すぐ隣に奥さんがいるのに気づくと、いきなり左手を握って結婚指輪にキスをしてから、俺が何を話しかけても知らん顔をしてるが、俺のことを怒ってるのかと尋ねた。
 奥さんが答える余裕もなく、彼は奥さんを抱きしめて、激しくキスをした。その力の強さに耐え切れなくなって、奥さんが金切り声を上げた。
 二人を引き離してから、私はご主人に、その身体は自分のものではなく他人のもので、今はもうスピリットの世界の人間になっていることを説明すると、意外に早く理解がいって、そうとは知らずに妻を苦しめたことを詫び、これからスピリットの世界のことを学んで、今度は霊界から妻を援助したいと述べた。ニューヨークに戻った奥さんに、その後は、何の異常も起きなくなった。
 そしてF・W氏はその後、我々の背後霊団であるマーシーバンドのメンバーとなって活躍している。
 その後、何度か出現して当時の実情を語っているが、次に紹介するのはその一つである。


 1920年11月22日
 スピリット=F・W氏


 「またまた参りました。この度は、私が決して死んでしまったのではないことをお教えしたくて参りました。そのためには、こうしてウィックランド夫人の身体をお借りしなくてはなりませんが、それ以外の時でも私は、いつもここへ来てお手伝いをしているのです。
 まずは、私を救ってくださったお礼を申し述べたいと思います。あのままでしたら、妻と共に大変なことになっていたことでしょうーそれも私の愚かさから・・・。スピリットの世界の素晴らしさについての話も、耳を傾ける気になりませんでした。
 両親は、厳格なクリスチャンで、その信仰は強烈でしたから、自分達と同じように信じない人は、誰であろうと非難しておりました。自分達が考えていることだけが正しくて、他はすべて間違いであると、骨の髄まで思い込んでおりました。
 そういう雰囲気の中でいたたまれなくなった私は、家を飛び出しました。まだ少年でした。なぜそんな無茶を、と言われても、両親の強烈なキリスト教信仰には、どうしても馴染めなかったのです。両親の説くことが信じられず、そういう私を、両親は『罪人』であると決めつけるのです。自分では罪人なんかであるはずがないと思っていましたから、信じられないのなら家を出るしかないと思って、飛び出したのです。
 そのことを、今でも少しも後悔しておりません。自分の家以外の世界を知ることが出来ました。辛いこともありましたが、でも多くのことを学びました。教会が教えていること以外のことを学び、自分で生き抜いて行く方法を身につけました。教会に対しては、子供の頃からその内情について聞かされていたこともあって不愉快な感じを抱き、批判的でした。
 すべての教会がそうだというのではありません。が、教義というものをあまり一方的に教え込まれると、人間は催眠にかれられたように、その教義のとりこになり、正しかろうが間違っていようが、自分達のすることはすべて正しいのだと思い込むようになります。その思い込んだ人にとっては『間違い』というものが存在しなくなり、たとえ間違ったことをしていても、それを正しいと考えてしまうのです。
世の風に当たっているうちに、ふと家が恋しくなって、両親と一緒に暮らすつもりで帰ってみました。が、そこは相も変わらずキリスト教一色に塗りつぶされた世界で、子としての義務を果たそうと頑張ってみましたが、ダメでした。このままではキリスト教に押しつぶされてしまうと思った私は、再び家を出ました。
 再び一人の生活に戻って、また新しい体験を得ました。心を広くもって、人生の明るい側面、楽しい側面を求めるよう努力しました。そのうち好きな女性との出会いがあって、二人で家庭を持ちました。ようやく家庭らしい家庭をもった気持ちでした。生まれて初めて幸福感を味わったものでした。その幸せな生活は数年しか続きませんでしたが、今でも思い出すと楽しくなります。
 私は、死後にも生命があるとは思っていませんでした。信仰というものは何一つ持っていませんでした。キリスト教でうんざりして、宗教的なものが嫌だったのです。死ねばそれでおしまいーその後には何もない、と考えていました。それも間違いでした。どっちに偏ってもいけません。中庸を守って、何でも勉強することが大切です。うっかりすると、踏み外してしまいがちな細い道ー理性と直観によって、神の素晴らしい顕現を理解していくという道を歩むのが一番正しいのです。
 私は急死によって、こたらへ来ました。死から覚めるのは、ちょうど睡眠から覚めるのに似ていて、すっかり目覚めてみると、妻が泣いておりました。とても悲しんでいるのですが、私にはなぜだか分かりません。自分が死んだことに気づかないのです。妻に声をかけて、一体どうしたのかと尋ねるのですが、知らん顔をしています。こんなに愛し合っているのに、何があったのだろうと不思議でなりません。妻への思いは募るばかりです。
 妻の悲しみの情に、私が同情して抱きしめたりしているうちに、ふと、彼女の磁気オーラの中に入り込んで、そこから出られなくなってしまいました。が、私はそのことに気づきません。ただ、どこかに閉じ込められたみたいで、そこから脱出しようと、もがきました。彼女ももがき、それが異常な行動となって現れていました。
 有り難いことに、マーシーバンドの配慮で、妻はこのサークルに案内されて、私も妻も、共に解放されました。もしもあのままだったら、二人とも惨めなことになっていたことでしょう。私が死後のことについて何の知識もなく、また知る気もなかったのが、そもそもの不幸のもとでした。
 皆さんに申し上げますー死後の生命の存在を絶対に疑ってはなりません。いつかは、すべての人間が同じ道を通らねばならないのです。『大いなる彼岸』へ至る前に、真理を求め、そして見出しておきましょう。そうすれば、目を大きく見開いて歩むことができ、行き先についても確信をもつことが出来るのです。
 もしもあの時、妻が博士の説得に理解を示さなかったら、おそらく私は彼女を自殺に追い込んでしまっていたことでしょう。そうしたら、今頃はどうなっていることやら・・・・想像しただけで怖くなります。
 私と同じような状態で霊界入りする人が大勢います。そういう人は、誰かの磁気オーラに引っかかって離れられなくなり、そのまま憑依状態となります。死後の世界についての基本的な知識があれば、そういう事態にはならずに済むのです。
 皆さんには、心からお礼を申し上げたいと思います。今では、かつての私と同じような不幸なスピリットを救ってあげる仕事に携わっていて、とても幸せです。妻のことも、背後から導くことが出来ます。
 どうか今後とも、ここにおいでの皆さまが、死後にも生命があるという事実の普及の為に努力してくださることを期待しております。地上で学ばないでいると、死後の世界へ来て学ばねばなりません。その時になって後悔することが実に多いのです。
 お二人(患者と付き添い)はついに大きな真理を学ばれました。それをどこかに仕舞い込んでおいてはいけません。人に教えてあげないといけません。それが霊的に強化されるゆえんとなり、二度と憑依されることがなくなります。今、地上に憑依の風潮が蔓延しております。それに歯止めをかけるためにも、死後の世界についての真理の普及が必要です。F・Wでした。さようなら」


自分の為にだけ生きた霊


うぬぼれ・虚栄心・野心・利己心が禍いしているケース

●タイタニック号事件で他界した男性
  地上時代の趣味や関心事が軽薄だった人間ーうぬぼれや虚栄心、野心、利己心といったものに支配されていた人間は、そうした低級な意識から脱して人の為に自分を犠牲にする行為を通して愛と同情心に目覚めるまでは、他界後もずっと地球圏に留まっているケースが少なくない。
 その種のスピリットが我々のサークルで招霊されて、高級意識が目覚めるということがよくある。
 上流社会の軽薄で豪華な生活のさ中で他界した一人として、1912年のかの有名なタイタニック号事件で他界した男性の場合を紹介しよう。


 1916年10月22日
 スピリット=ジョン・J・A


まずステッドが出て簡単な事情を説明した後、別の霊がまるで海に投げ出されて必死に助けを求めているような状態で出現した。
スピリット「助けてくれ!助けてくれ!」
博士「どちらから来られましたか」
スピリット「今ここを出て行った人が、ここに入れと言うものですから来ました」
博士「海の中にいたのですか」
スピリット「溺れたのです。でも、また息を吹き返しました。今の方の姿は見えないのですが、声だけは聞こえました。『ここに入りなさい。そのあと一緒に行きましょう』と言ったのです。ですが、どこにいるのか分かりません。目が見えなくなってしまった!何も見えない!海の水で目をやられたのかも知れませんが、とにかく見えません」
博士「それは霊的な暗闇のせいですよ。死後にも生命があることを知らずに肉体から離れた人は、暗黒の中に置かれるのです。無知が生む暗黒です」
スピリット「今、少し見えるようになりました。少し見えかけては、すぐまたドアが閉められたみたいに真っ暗になるのです。妻と子供のそばにいたこともあるのですが、二人共私の存在に気がつきませんでした。今はドアが開いて、寒い戸外に閉め出されたみたいな感じです。我が家に帰っても孤独です。何かが起きたようには感じてますが、どうしてよいのか分かりません」
博士「ご自分が置かれている事情がお分かりにならないのですか」
スピリット「一体、私に何が起きたのでしょうか。この暗闇は何が原因なのでしょうか。どうしたら脱け出せるのでしょうか。自分のことがこんなに思うようにならないのも初めてです。いい感じになるのは、ほんの一時です。今、誰かの話し声が聞こえます。おや、さっきの方が見えました。ステッドとおっしゃってましたね?」
博士「そうです。あなたが来られる前にステッドさんが、その身体で挨拶されたのです。あなたをここへご案内したのは、ステッドさんですよ。ここに集まっている者は、あなたのように暗闇の中にいるスピリットに目を覚まさせてあげる仕事をしているのです」
スピリット「ひどい暗闇です。もう、ずいぶん永い間この中にいます」
博士「いいですか、『死』というものは存在しないのです。地上で始まった生命は肉体の死後も続くのです。そして、そのスピリットの世界では、人の為に役立つことをしないと幸せになれないのです」
スピリット「たしかに、私の生活は感心しなかったと思います。自分の為にだけ生きておりました。楽しいことばかり求めて、お金を使い放題使っておりました。このところ、自分が過ごした生活ばかり見せられております。見終わると真っ暗になります。それはそれはひどい闇です。過去の生活の一つ一つの行為が目の前に展開し、逃げ出そうとしてもダメなのです。ひっきりなしにつきまとって、なぜこんなことをしたのかと責め立てます(注)。たしかに、今思うと、わがままな選択ばかりしていたことが分かります。ですが、後悔先に立たずで・・・」
 (注 守護霊を含む高級霊が意図的に行うもので、反省と改心の余地のある霊に限られる)
博士「地上で自分本位の生活ばかりしていた人は、大抵霊界へ行ってから暗闇の中に置かれます。あなたは、これから霊界の素晴らしい側面を勉強して、人の為に役立つことをすることが、スピリットの世界の大原則であることを理解しないといけません。その時に味わう幸せが『天国』なのです。天国とは精神に生じる状態の一つなのです」
スピリット「なぜ、そういうことを地上で教えてくれないのでしょうか」
博士「そんな話を地上の人間が信じるでしょうか。人類は、一握りの人を除いて、大体において霊的なものを求めず、他のこと、楽しいこととお金になることばかり求めます。霊的真理は求めようとしないものです」
スピリット「なんとなく奇妙な感じが、ジワジワと迫ってくるみたいです。おや、母さん!母さんじゃないの!僕はもう大人なのに、なんだか子供に戻ったみたいな感じがする。ずいぶん探したけど、僕はずっと暗闇の中で生活していて・・・。なぜこんなに見えないのでしょう?この目、治ると思いますか、母さん?このままずっと見えないままですかね?母さんの姿は見えるのに、それでも盲目になったような感じがするのは変だと思わない?」
博士「あなたは肉体がなくなって、今は霊的な身体に宿っているのです。だから、その霊体の目が開けば霊界の美しいものが見えるようになるのです」
スピリット「あそこにステッドさんがいるのが見えます。同じ船に乗り合わせた方です。なのにステッドさんは暗闇にいるように見えませんが・・・」
博士「あの方は、地上にいた時から霊界のことや、こうして地上へ戻ってこれることを、ちゃんと知っておられたのです。人生というのは学校のようなものです。この地上にいる間に、死後の世界のことを出来るだけたくさん知っておかないといけないのです。霊界へ行ってから、辺りを明るく照らす光になってくれるのは、生命の問題について地上で学んだ知識だけなのです」
スピリット「そういうことを、なぜ誰も教えてくれなかったのでしょうか」
博士「では、もし誰かがあなたにそんな話をしていたら、あなたはそれを信じたと思いますか」
スピリット「私が付き合った人の中には、そういう知識をもった人はいませんでした」
博士「今年は何年だと思いますか」
スピリット「1912年です」(タイタニック号が沈没した年)
博士「実は1916年なのです」
スピリット「では今まで、私はどこに行ってたのでしょう。お腹は空くし、寒くて仕方がありませんでした。お金はたっぷりあったのです。ところが最近は、それを使おうと思っても手に取れないのです。時には暗い部屋に閉じ込められることもあります。その中で見せられるのは、過去の生活ばかりなのです。
 私は、決して悪いことはしておりません。ですが、いわゆる上流階級の人間がどんなものかは、あなたも多分ご存知と思います。私はこれまで『貧しい』ということがどういうものかを知りませんでした。これは私にとって、まったく新しい体験でした。なぜ世の中は、死ぬ前にそれを思い知らされるようになっていないのでしょうか。地上で思い知れば、私のように、今になってこんな苦しい思いをせずに済むでしょうに・・・」
博士「お母さんやお友達と一緒に行って、その方達が教えてくださることをよく理解してください。そうすれば、ずっと楽になります」
スピリット「ステッドさんの姿がはっきり見えます。あの方とはタイタニック号で知り合ったのですが、お話を聞いていて、私には用の無い人だなと思っておりました。年齢もかなりいっておられたようでしたので、霊的なことを趣味でやっておられるくらいに考えたのです。人間、年齢を取ると、一つや二つの趣味を持つものですからね。
 私には、そんなことに興味をもっている余裕はなかったのです。お金と、お付き合いのことしか関心がありませんでした。貧しい階級の人に会う機会がありませんでしたし、会う気にもなりませんでした。今はすっかり考え方が変わりました。ところが、こちらはお金に用のない世界です。
 母が私を待ってくれています。一緒に行きたいと思います。何年も会っていないものですから、嬉しいです。母が言ってますーこれまでの私は、気の狂った人間みたいに、まったく言う事を聞かないで、手の打ちようがなかったのだそうです」
博士「お名前を伺いたいのですが」
スピリット「ジョン・J・Aと申します。皆さん方との縁を嬉しく思います。お心遣いに深く感謝いたします。今やっと、これまで思いもよらなかったものが見えるようになり、聞こえるようになり、そして理解できるようになりました。母達が迎えにやってきました。あの奇麗な門を通り抜ければ、きっと私にとっての天国へ行けるのでしょう。
 改めて、皆さんにお礼を申し上げます。いつの日か、もう一度戻って来れることを期待しております。
 さようなら」


●幸福とは無縁だったと嘆く上流階級出身者
 このジョン・J・Aはその後、急速に霊的感覚が目覚め、それからわずか二週間後に、地上時代の上流階級の知人を案内してきている。同じように、ルシタニア号(注)という豪華船と共に海に沈んだまま、彷徨っていたスピリットである。
 (注 英国の客船で、1915年に大西洋においてドイツの潜水艦によって撃沈され、乗客に米国人が多かったことから、米国が第一次大戦に参戦する要因の一つとなった)


 1916年11月5日
 スピリット=アルフレッド・V


スピリット「ある人から、ここへ来れば温まるよと言われてやってきました」
博士「お名前は何とおっしゃいますか」
スピリット「アルフレッド・Vです。客船に乗っておりました。知人のジョン・J・Aがやってきて、いいところへ連れていってやるというものですから、ついてきました。ここへ来れば救ってもらえるというのです。
 一体、どういうことなのでしょうか。私はかつてひもじい思いなど一度も味わったことのない暮らしをしていたのに、今は空腹と寒さに悩まされております。全身ずぶ濡れなのです」
博士「それは、あなたの精神状態の反映にすぎません。あなたはもう肉体を失ったのですから、空腹を覚えるはずはないのです」
スピリット「溺れたのをはっきり覚えております。それ以来、ずっと悲惨なことばかり続いております」
博士「死後の世界がどういうところなのかを理解すれば、人の為に役立つことをすることが、自分を幸せにする唯一の道であることを悟られるはずです」
スピリット「裕福だった地上時代でさえ、幸福感というものを感じたことは一度もありません。わがままが過ぎていたのだろうと思います。こんな暮らしをして何になる、という思いがよぎったことが何度もありました。しかし、すぐに『いいじゃないか、愉快に生きればいいんだ』と反発しました。
 上流社交界の生活には関心をお持ちでないかも知れませんが、あんな世界に入ると華やかさに溺れてしまいます。私はそういう生活を少しも楽しいとは思っていませんでした。そこで私は、気持ちのはけ口を馬に求めました。いい馬に恵まれると、生涯、忠実に付き合ってくれます。それに引きかえ、人間の社交界では、女性は一面しか見せませんー笑顔です。そして、その笑顔は一転して憎しみに変わることがあるのです。そこで私は、愛情を美しい馬に求めたのです。馬が何よりの楽しみであり、馬も私によくなついてくれました。
 女性が私に近づくのは、ただ金と快楽が目当てでした。私から搾れるだけ搾り取ろうという魂胆からでした。私も気前よく贈り物をし、快楽にうさを晴らしていました。しかし、幸せというものは感じませんでした。社交界は名誉も恥もありません。もしも、社交界に馬ほどの忠実さと真心を持った人間がいれば、そういう世界にいることに感激もすることでしょう。が、まあ、一度その世界へ足を踏み入れてごらんなさい。男も女も、下らぬ人間ばかりです。
 私自身も、その下らぬ人間の一人でした。しかし、まわりには、こんなことでいいのかという私の心の中で問いかける声、すなわち良心の呵責を忘れさせてしまうようなことばかりがある世界でした。それで、何か心安らぐものを求めました。それが馬です。
 社交界は、それを当然と割り切れば、それなりに結構いい世界なのです。ですが、以上の話から推察なさっておられると思いますが、私は知らぬ間に、自分のことしか考えない人間になっておりました」
博士「しかし、これからは、そうした過去の生活のことは忘れて、もっと程度の高いものを求めるべきです。そうすれば霊的な目が開けます」
スピリット「私のことを心配してくれる友人が、ここへ案内してくれました。お陰で大分事情が分かってきました。多分ー必ずという自信はありませんが、ーこの調子でいけば、幸せになれることでしょう。私はまだ、心からの幸福感というものを味わったことがないのです。子供の頃から、わがままな生活に慣れてしまっていたからでしょう。
 本日は、こういう機会を私に与えてくださって有り難うございました。本当の幸せを味わうことが出来るようになりましたら、もう一度来させて頂いて、その報告をさせて頂くつもりです」


このアルフレッドは、それからほぼ二年後にジョン・J・Aと共に、次に紹介する映画女優のアンナ・Hを案内してきた時に、約束どおりの報告をしている。


 1918年9月8日
 スピリット=アンナ・H


スピリット「水を!水をください!(水を与えると、ごくごくと飲んだ)ありがとう!ずっと病気をしていて、まだ元気が出ません。どの医者に診てもらっても、どこが悪いのか分からないのです。安静にしてなさいと言うだけで・・・脚と腰がとても痛みます」
博士「痛みを取ってあげましょう」(と言って霊媒の両脚をもむ仕草をする)
スピリット「あまり無茶に扱わないでください。美しい体形を損ないたくありませんので。もう一度元気になって、女優の仕事に戻りたいのです。ずっと病気がちで、なかなか元気になれません」
博士「お名前は?」 
スピリット「アンナ・Hです」
博士「ロサンゼルスには、どうやって来られたのですか」
スピリット「ここはロサンゼルスではありません。ニューヨークです」
博士「どなたの案内で来られましたか」
スピリット「夢だろうと思うのですが、アルフレッドが来て話しかけたのです。私のファンだったのですが、もう死んでるんです。その彼が今、目を覚ましなさいなんて言ってます。私は今、とても身体の調子が悪くて・・・。でも、元気が出て来たみたいです。もう一度元気になって、女優の仕事が出来るようになるでしょうか」
博士「物質の世界での仕事はもう出来ません」
スピリット「したいのです。アルフレッドが色々と心配してくれるんだけど、彼はもう死んでるはずなのです」
博士「ご覧になって、死んだ人間のように見えますか」
スピリット「それが、とても元気そうに見えるのです。でも、私は夢を見ているのだろうと思ってました。おや、ジョンもいる!二人とも死んだはずなのに」
博士「あなたも死んでるんですよ」
スピリット「いつ死んだというのですか」
博士「少し前に」
スピリット「アルフレッドが、今はジョンと一緒に霊を目覚めさせる仕事をしているのだと言ってます。でも、あの二人はスピリットの存在なんか信じていなかったはずです。私は、死にたくありません」
博士「本当に死んでしまう人はいないのです」
スピリット「死にますとも。お医者さんは、私は元気な身体には戻れないと言うものですから、なんとかして生きてやろうと闘ってきました。生き続けたいのです。病気を克服して元気になりたいのです。美貌を失いたくないのです」
博士「これから『美しいスピリット』になることを心掛けないといけません」
スピリット「二人が、私を連れて行って悟りを見つけさせてあげたいと言っています」
博士「あのお二人も、このサークルに来て真理を見出したのです。ここに来るまでは霊的にとても貧しかったのですが、地上の生活よりはずっと美しい生活があることを理解してからは、とてもリッチになられましたよ」 
スピリット「ここは何をなさるところですか。みんなが言うには、『真の生命の悟りへの門』だと言うのですが・・・。
(ドレスの違いに気づいて)このドレスはあたしには合ってないわね。(首と肩に手をやって)この首も顔も身体も、あたしのものじゃないわ。あの方達が言うには、あたしはまだ元気が足りないけど、一緒に来れば、素敵なところへ案内してくれるそうです。その前に学ばねばならないことが沢山あるそうです」
博士「『精神』とは何かということを真剣に考えてみたことがありますか」
スピリット「ありません。ただただ、美しい肢体を保つことばかりを考えておりました。だって、この美しさと演技力がなかったらファンは出来なかったし、生計も立てられなかったはずですもの。
 わあ、沢山の人が集まっています。アルフレッドが、ここへ来たら知り合いの人達に会わせてあげると言ってました。それと、美しい家へと案内してあげると言ってました」
博士「そういう世界のことを、その人達は何と呼んでましたか」
スピリット「あたしは気に入らないのですけど、『霊界(スピリットワールド)
』と呼んでいます。死後の世界の家なのだそうです。あたしは、霊的な目が開くまでは、地上から持ち越した習性を克服しないといけないのだそうです。アルフレッドが、あたし達は社交や自分の為ばかりに生きてきたので、その償いをしないといけないのだと言ってます。おいでと言ってくれてるのですが、元気がなくて行けません」
博士「病気だったのは肉体の方です。あなたにはもうその肉体はないのです」
スピリット「少し前よりは、元気になったみたいです」
博士「私の妻は霊媒でして、あなたはその妻の身体を使って喋っておられるのです。アルフレッドもジョンも、今のあなたのように、私の妻の身体で喋ったことがあるのです」
スピリット「節々が痛みます」
博士「それは、肉体ではなく、あなたの精神がそう感じているだけです。精神は肉体と別ものです。精神は目に見えないものです。あなたの姿も、私達には見えておりません。あなたは『目に見えない存在』となられたのです」
スピリット「(顔に触りながら)たしかに、これはあたしの顔ではありません。この体形も気に入りません。あたしは美しくないとー」
博士「これからは霊界において、人に役立つことをなさるのが義務なのです」
スピリット「皆さんがあたしに、一緒に来るように言ってます。あたしのことにたいそう関心をもってくださいました。節々の痛みも和らいできました。それにしても、皆さんは、あたしの知らない方達ばかりなのに、なぜあたしはここへ来ているのでしょうか。今夜、ここにいることの理由が分かりません」
博士「私どもは、人間は死後どうなるかについて知るために、色々と実験をしているところなのです。私の妻は霊媒でして、あなたは、その霊媒の身体を使って喋っておられるのです」
スピリット「アルフレッドが、もう行かないといけないと言ってます。あたしは、自分が死につつある夢を見て、絶対に死ぬものかと必死に抵抗しました。死にたくなかったものですから、全精神力を振り絞って、生き永らえようとしました。
 そのうち、ある日、急に元気がなくなり、しばらく寝入りました。が、死にたくなかったので、また目を覚ましました。みんなは、あたしが死んだと思ったようですが、死んではいませんでした。寝入っただけだったのです。生命は大切ですので、どうしても生き続けたいと思ったのです。ですが、永い間病気がちで、ずいぶん苦しみました。
 そのうち、また寝入ってしまい、今度はずいぶん永いこと眠りました。そして目が覚めてみると、辺りは真っ暗でした。何も見えないのです。闇また闇の世界です。明かりは一つも見えないのです。動転しました。辺りは闇ばかりなのです。
 そのうちまた、寝入ったらしいのです。そして、その夢の中でアルフレッドとジョンがやってきて、『アンナ、起きなさい!助けに来てあげたよ。一緒においで。さあ、おいで』と言うのです。
 その言葉で目が覚めかけたのですが、あまりに元気がなく、とても一緒に行けそうにありませんでした。が、二人は『新しい身体が頂けるところへ案内してあげるから、おいで。元気になるよ。もっともっと美しい世界へ行こうよ』と言ってくれました。
 それで、ここへ来たのです。今はすっかり元気になりました。どうなのでしょう、もう痛みは出ないのでしょうか。とても辛かったです」
博士「アルフレッドとジョンは、今も昔と変わりませんか」
スピリット「いえ、昔とはすっかり違います。とても真剣な表情をしています。あまり真剣なので、別人のような感じすらします。昔より若返ったように見えるのに、人間的には昔よりしっかりしているように見えます。昔みたいに『ねえ、遊びに行かない?』なんて言わなくなりました。
 ファンがちやほやしてくれる間は、生きてるのが楽しかったのですが、それは結局自惚れていたわけで、それが健康を害する元になりました。美貌を保つ為に食べ過ぎないように、飲み過ぎないように、肉を取り過ぎないようにーそう思ったわけです。要するに、奇麗だ、奇麗だと言われたい一心だったのです。
 お医者さんは、着飾ろうとする気持ちがそうまで強くなかったら、病気にはならなかったはずだと言ってました。が、そんな忠告には耳を貸しませんでした。しっかり食事を摂るように言われても、やはり美しい肢体を保つ為には、毎日マッサージと入浴を欠かさないようにして、食事を制限するしかありません。それで栄養失調になってしまったのです。
 暗闇の中にいる時にアルフレッドがやってきて、『さ、そんな美貌や自惚れよりも、もっともっと素晴らしいものを見せてあげるから、おいでよ。そんなものは陽炎みたいなものさ。さ、来るんだ。本当に美しくなる方法を教えてあげるよ。人の為に役立つことをして、自分を忘れ、わがままを無くすことさ』と言ってくれました。
 あたしもそうしなきゃならないのかも知れませんね」


 ここでアンナは、突如として霊媒から離れた。そして、まる二年後に再び出現して、その後の回復ぶりについて語っている。


●死後、親友の身体に憑依したスピリット
我々がシカゴにいた時分に、S夫人とサイモンズ夫人という大の仲良しがいて、我々との交際もあったが、サイモンズ夫人は『人間は死後、みんな花や木や小鳥になる』と信じていて、スピリチュアリズムを全部まやかしと決めつけ、特に自動書記を馬鹿にしていた。
 そのサイモンズ夫人が、浮腫と腰痛で苦しみながら、S夫人に看取られて他界した。それから何年かして、S夫人が鬱病になり、同時に、まっすぐに歩けないほど背骨に痛みを覚えるようになった。二週間ほど入院治療を受けたが一向に改善が見られないので、ついに我々を尋ねて来た。そして、次に紹介する招霊会の後、完全に健康を取り戻した。


 1919年10月27日
 スピリット=サイモンズ夫人
 患者=S夫人


 乗り移ると同時に、うめき声を上げながら両手を背中にまわして、痛そうな顔をした。
博士「どこかお悪いのですか。肉体を失っていることに気がついていないようですね」
スピリット「よく分かりません」
博士「痛みは取ってあげますから、まずお名前をおっしゃってください」
スピリット「知りません」
博士「自分の名前くらい知ってるでしょう?」
スピリット「頭が働かないのです 」
博士「死んでどのくらいになりますか」
スピリット「自分が死んだのかどうかも分かりません」
博士「お友達は、あなたを何と呼んでましたか」
スビリット「サイモンズ」
博士「どこにお住まいでしたか」
スピリット「シカゴです」
博士「シカゴのどこですか」
スピリット「ずいぶん昔の話なので覚えていません。感じがすっきりしません」
博士「どんな感じですか」
スピリット「身体が小さくなった感じで、居心地もよくありません」
博士「ご自分が他人の邪魔になっていたことはお気づきですか」
スピリット「何だかぼうっとしている感じで、しっくりしません」
博士「なぜだと思いますか」
スピリット「分かりません」
博士「スピリットというものの存在は信じてなかったのでしょうね」
スピリット「信じてませんでしたし、今でも信じてません」
博士「じゃ、自分の存在も信じないわけですか。スピリットの存在を信じる人間は、愚か者と思っておられたのでしょうけど、自縛状態のスピリットになるのはもっと愚かじゃないでしょうか。あなたは、その地縛霊になっていたのですよ」
S夫人「このあたしをご存知でしょ?」
スピリット「声に覚えがあります。友達にそんな声の人がいます」
S夫人「今その方は、どこにいますか」
スピリット「シカゴです」
博士「その方の仕事は?」
スピリット「知りません。何もかも真っ暗闇で、何も思い出せません。その声には聞き覚えがありますが、誰だかは分かりません。名前が思い出せません。ただ、シカゴで知り合いでした。よく会いに来てくれました。その方はあたしにとって太陽のような存在で、とても力になってくれました」
博士「何をなさっていた方ですか」
スピリット「いつも明るい性格をしておられたのですが、ある時からスピリチュアリズムに興味を持つようになって・・・。下らないことはお止めなさいと言ってあげたのですが・・・。あたしはあんなものはご免こうむります。
 あの方がいなくなって、寂しいです。滅多に会わなくなりました。自分が小さくなったみたいで、居心地がよくありません。あの方の名前がどうしても浮かんできません」
博士「呼び名は何とおっしゃいました?」
スピリット「あ、やっと思い出した!Rーです。なぜか記憶が変なのです。時折明かりがさすこともあるのですが、すぐまた狭いところに閉じ込められてしまった感じになるのです。あたしは体格の大きい女ですので、あの場所(本当はS夫人のオーラ)は狭くて窮屈です」
博士「時々熱くなったことがあるでしょう?」
スピリット「ええ、ありました。なぜだか知りませんけど、時々焼かれるような感じがします。今は、辺り一面真っ暗です。何一つ見えません。火で焼かれるのがいいか、窮屈な場所で息も出来ずにじっとしているのがいいか、分かりません。なぜだかが分からないのです。ただ、何か大きいショックを受けたみたいなのです」
博士「あなたは、ショック死をなされたのですか」
スピリット「死んでなんかいませんよ。時々火が降り掛かってくることがあります。雷みたいな音を伴っていて、ズキズキ痛みます」
S夫人「ウィックランド先生をご存知でしょ?」
スピリット「ええ」
S夫人「あの先生が使っておられた器械を覚えてるでしょ?」
スピリット「あの火を発射する器械ですか」
S夫人「そうです。あれですよ、あなたが時々受けてるというのは」
スピリット「でも、あたしは、あの先生から何の治療も受けてませんけど・・・」
S夫人「あなたは、ずっと私を苦しめていたのです」
スピリット「あたしが、なぜあなたを苦しめるのですか」
S夫人「先生に説明して頂きましょう」
博士「別に難しい話ではありません。あなたは今はもうスピリットになっていて、お友達につきまとっておられたのです。居心地が良くないのはその為なのです。今はシカゴではなくて、カリフォルニアにいらつしゃるのですよ。ロサンゼルスです。Sー夫人を覚えてらっしゃるでしょう?」
スピリット「ええ、シカゴに住んでました」
博士「その方も、あなたと同じロサンゼルスにいらっしゃるのです」
スピリット「あたしは、シカゴの人間です。いつも脚が痛くて、頭痛も酷かったです」
S夫人「その痛みが、最近、あたしに移ってきたのです」
博士「あなたが、その痛みをS夫人に移したのです」
スピリット「そんなはずはありません。何かの間違いです」
S夫人「シカゴにいらしたウィックランド夫人を覚えてらっしゃるでしょう?ウィックランド先生の奥さんです。あの方が霊媒だったのはご存知でしょ?」
スピリット「よく覚えていません。なぜか記憶がはっきりしません」
S夫人「あなたは、物知りだったはずだけど・・・」
スピリット「何でも知ってたつもりなんだけど・・・。そう、そう、あなたは、あのスピリチュアリズムとかいう馬鹿なことをやり始めたわね。あたしは一切関わりたくなかったわ。あなた、今でもあんなことに時間を浪費してるの?」
S夫人「あなたこそ、このあたしに取り憑いて時間を浪費してたのですよ」
スピリット「いいえ、あたしはスピリチュアリズムなんかに首を突っ込むのはご免です。何の役にも立たないんだから・・。
 あの火だけは嫌だわー耐えられないもの・・・。とうとう逃げ出しちゃった。痛かったわ。出たと思ったら、別の部屋に閉じ込められてしまって・・・」
博士「『無知の部屋』に閉じ込めたのです」
S夫人「あなたは、死んでからずいぶんになるのですよ」
スピリット「あたしは、死んでなんかいません」
博士「その手をご覧なさいよ。あなたのものだと思いますか。あなたは今、他人の身体を使って喋ってるのです。かつては『イカサマ』だと思っていたものが『ホンモノ』であることを今、あなたご自身が証明しているのです」
S夫人「サイモンズさん、今年は何年だかご存知ですか」
スピリット「何も知りません。あたしの家はどこでしたかね?娘はどうしてるのでしょうね?」
S夫人「お嬢さんはここにはいません。ここはカリフォルニアのロサンゼルスです」
スピリット「いいえ。あなた、少し頭がおかしいんじゃない?ここがシカゴであることが分からないの?」
S夫人「あたしは、このカリフォルニアに六年も住んでるのよ」
スピリット「ここはシカゴです。なんて変な人なんでしょう!きっと催眠術にでもかかって、そんな話を信じさせられてるのよ」
博士「本当のことをお話しましょうか。あなたはもう何年も前に亡くなられて、お友達のS夫人につきまとっておられたのです。今そのS夫人から追い出されて、私の妻の身体を使っておられるのです。一時的に使用することを許されたのです。事情をしっかりと理解して頂く為です。
 あなたは、サイモンズさんとおっしゃいましたね。ですが、この身体はウィックランドという女性のもので、今、このカリフォルニアのロサンゼルスにいるのです。あなたは、シカゴにいるとおっしゃっていて、その辺のことが得心がいかないようですが、それは、あなたがS夫人に憑依しておられたからです」
スピリット「とても暗い闇の中で彼女が見えたので近づいたのです。どうやらあたしは、しばらく眠っていたらしくて、目が覚めた時に明かりが見えたのです。その中にいると少し明るくなるものですから」
博士「その時、あなたはS夫人の磁気オーラの中に入ってしまい、それがS夫人を苦しめることになったのです。その中から引き出す為に、私が電気を使ったのです」
S夫人「あたしがお願いしたのです」
スピリット「あなたは、あたしのような気の毒な老婦人への思いやりのない人なのね」
博士「もしもあなたご自身が地縛霊に操られていたらどうします?」
スピリット「あなたと話しているのではありません」
博士「あなたは、よほどS夫人に迷惑をかけたいのですねえ」
スピリット「あたしはただ、明るさが欲しくてつきまとっただけです。迷惑をかけた覚えはありません」
博士「ではなぜ、S夫人にかけた電気があなたにこたえたのでしょう?私はS夫人の身体に電気をかけたのです。あなたではありません」
S夫人「ですから、サイモンズさん、その治療代は本当はあなたに支払って頂かないといけないのです」
スピリット「一つだけ教えてくださいー私はどうやってここへ来たのでしょうか。あなたの言ってることは信じられないけど、もしその通りだとすると、あなたはこのカリフォルニアにどうやって来たのですか」
S夫人「それは勿論、汽車賃を払って来たのですよ。あなたは払いましたか」
スピリット「払ってるもんですか。ですから、どうやって来たのとかと尋ねているのです。とにかく信じられませんね。あなたは今シカゴにいるのですよ。Sさんは、一度もカリフォルニアへは行ったことがありません」
博士「ほら、あのガタゴトいってる音、聞こえるでしょ?あれはロサンゼルスを発ってシカゴへ向かう列車の音ですよ」
スピリット「あれはノースウェスタン列車です」(米国北西部を走る列車)
博士「そんな列車はここは通りません。こんな言い合いをして、一体、何の得になるというのでしょう?私達がお教えてしている実情を理解なされば、すっきりなさるのです。あなたは七、八年前に肉体を失ってスピリットになっておられるのに、そのことに気づかずに昔のお友達の身体に取り憑いて迷惑をかけているのです」
スピリット「どうしてそういうことになるのかが理解できません」
博士「どうしてもこうしてもありません。『事実』を申し上げているのです」
S夫人「あなたの遺体は、六年か八年前にワルトハイム共同墓地に埋葬されたのです」
スピリット「あたしは、ずっと眠っていて、そのうち激痛がして目が覚めたまま動けなくなったのです。とても窮屈な感じがして・・・」
博士「それはですね、S夫人の身体があなたより小さいからです。あなたは、S夫人に憑依していたのです」
スピリット「どうやって彼女の身体の中に入ったのでしょう。身動きも出来ない感じでした。とにかく、お二人のおっしゃってることの意味が分かりません。あたしは信じません。一体何の目的でそんなことをおっしゃるのか、それが知りたいです」
博士「『生命』というものについて勉強したことがあおりですか」
スピリット「樹木のこと、自然界のことについて勉強したことがあります」
博士「では、樹木がどのように生長していくかを観察なさったことがあるでしょう?素晴らしいとは思いませんか。神は生命を賦与し、それが生長させるのです。生命とは何なのでしょう」
スピリット「神だと思います」
博士「『心』というものを、その目でご覧になったことがありますか」
スピリット「心は心です」
博士「その心を見たことがありますか」
スピリット「ありませんよ。でも、心がなければ話も出来ません」
博士「心は目に見えないものですね?」
スピリット「見たことはありません」
博士「では、あなたという存在は私達には見えていないと申し上げたら、どう思いますか。私は、あなたに向かって話をしていますが、目に見えているのは、私の妻の身体だけなのです」
スピリット「あなたの奥さんの身体?Sさん、これどういうこと?あたしの身体はなくなったということなの?」
S夫人「そうです、なくなったのです」
博士「その事実を認めようとしないその頑固さが、あなたを暗闇の中に閉じ込めているのです」
スピリット「実を言うと、一時期、歩いても歩いても、どこにも行き着かないことがありました。辺りは真っ暗でした。疲れて、少し休んでから、また歩き出すのです。そのうち、小さな明かりが見えてきて、それを見た瞬間『Sさんだ!』と思ったのです。『そうだ、あの人は親友だった』ーそう思ったら、Sさんの姿が見えたのです」 
博士「心に思った念で、S夫人のところへ行ったのです」
スピリット「すると、とたんに全身が痛くなり始めました。それまでは痛みを忘れていたのです。なのに、その明かりに近づくと、痛みがぶり返すのです」 
博士「人間の身体の中に入った時に痛みを覚えたのです。自縛のスピリットは人間の身体と接触すると、死に際の痛みをもう一度味わうのです。あなたはその地縛霊の一人になっていたことを理解しないといけません。だから、S夫人に接触すると、地上時代の痛みを覚えたのです。あなたは、死ねば木や花になると信じていたそうですが、なっていませんね?どうしたのでしょう?」
S夫人「あなたの遺体は、シカゴのワルトハイム共同墓地に埋葬されていますよ。なんなら行って墓碑銘を確認してみられたら?」
スピリット「そんなこと、したくありません」
博士「教会へは通っておられましたか」
スピリット「死ねば、すべてお終いと信じてました。Sさん、あなたが信じていたような馬鹿げた考えはもっていませんでしたよ。あたしは、あたしなりの考えがありました」
博士「せっかく神がお造りになったこの世界のことを、あなたは何一つ勉強なさらなかったのですね」
スピリット「(急に興奮して)まあ、どうしよう!どうしよう!母の姿が見えるのです。墓の中にいるはずなのにーそう、ずいぶん前に埋葬したはずです!幽霊だわ!でも、とってもきれい!」
博士「お母さんは、あなたほど考えが狭くなかったのです。死んだら木になるなんて考えてませんでしたよ。素直に学ぶようにならないといけません。イエスも言ってるじゃないですかー『童子のごとくあらずんば神の国に入るあたわず』と」
スピリット「ユダヤ人だったイエスの教えなんか信じません」
博士「何を信じようと、何を信じまいと、それは生命の実相とは何の関係もないのです」
スピリット「母さん、ほんとに母さんですか。まあ、見て、あの美しい道!きれいな木や花が咲き乱れて・・・あの庭、あの家、なんて美しいのでしょう!そこを母が歩き回っています」
博士「お母さんは、木になってはいないでしょう?」
スピリット「母が言ってますー『さ、いらっしゃい。私の家ですよ』と。母と一緒に行けないでしょうか」
博士「無知のままでは『神の国』へは入れません」
スピリット「あの急な坂道を見て!こんな図体ではあんな丘は登れないわ!母が言ってますー身体で登るのではありません。『悟りの丘』を登るのです。『自分』を忘れないといけません。自分中心に生きてきたこれまでの生活のことは、もう忘れないといけません。そして、これからは、人の為に役立つことをするのですーと。
 分かったわ、母さん。分かったわ。たしかに、あたしは独りよがりでした。母さん、登ってみます。でも、手を貸してくださらないと、とてもあんな高いところへは登れません。一人ではダメです(泣き出す)。
 もうこれ以上、こんな惨めな状態のままでいるのは嫌です。連れてってください、母さん!母がこう言ってますーあの『悟りの丘』を登る前にしなければならないことが沢山ある・・・。その一つが、利己主義と嫉妬心と恨みの念を棄てることだそうです。昔の友達に迷惑をかけたことを許して頂かないといけない、と言ってます。あたしの母親だからといって、すぐに連れて行くわけにはいかないそうです。その前に、学ばないといけないことがあるそうです。
 Sさん、ごめんなさい。あたしは、ずいぶんあなたに迷惑をかけたそうですね。これからは、あなたのお役に立つことをします。します、きっとします」
博士「相談相手になってくれるお友達が大勢いますよ。高級霊の方に何でもお聞きするのですよ。いいですか」
スピリット「はい、聞きます。先生のなさったことに感謝しないといけないと、皆さんが言ってます」
博士「もう、スピリットの存在を信じますね?」
スピリット「信じないといけないでしょうね。皆さん、このあたしのようにわがままを言ってはダメです。こんな酷い目に遭うことになります。自分を救うのは自分しかいないと、皆さんが言ってます。
 では、まいります。さようなら」