バートン夫人の憑依霊2


別の日の交霊会で、バートン夫人に憑依していたスピリットの一人で『フランク』と名乗る者が、夫人の身体から離れて霊媒に乗り移って語り始めたが、記憶がほとんど戻らない。

博士「どちらからおいでになりましたか」
スピリット「知りません」
博士「ここにどなたかご存知の方がいますか」
スピリット「知った人は見当たりません」
博士「自分がどこから来たかが分かりませんか」
スピリット「分かりません。自分が分からないことに答えられるわけがないでしょう?」
博士「死んでどのくらいになりますか」
スピリット「死んでから?なんということを!一体、これはどうなってるんですか。こうして私を取り囲んでいるのが、そもそも変です。何かの集会ですか。何という集会ですか」 
博士「その通り、集会です。ご自分が誰であるか、ぜひおっしゃってください」
スピリット「どうして名前を言わなきゃならんのですか」
博士「初めてお会いする方だからですよ」
スピリット「こんなわけの分からない集会にいてもいいものやら・・・・。どうもこの私は、初めて会う人に変わった人間に映るらしいな」
博士「どちらからおいでになったのか、おっしゃってください」
スピリット「どう思い出してみても、それが分からないのです。返事のしようがないのです。これこれ、なぜ私の腕をつかむのですか。身体は頑強な男です。じっと座ってることくらい出来ますから・・・」
博士「女性だと思っていたものですから・・・」
スピリット「馬鹿を言っちゃ困ります。どこを見て女だと思うのですか。もう一度よく見てくださいよ。間違いなく男ですよ。これまでずっと男でしたよ。ただ、しばらく具合がなんとなくおかしかったことがあったな。
 ずっと歩き続けていたら、どこかで歌う声(交霊会の開会の時に出席者全員で歌う)が聞こえたもんだから、覗いてみようかと思ってるうちに、急に気分が良くなった。それまでは気がすっきりしなかったけど、それから(バートン夫人のオーラに引っかかってから)何もかもが、いつもと違うんだな。一体どうなってるんだか、自分でも分からんのです。
 例の歌声のしたところへ行ったら事情が分かると言われて、その気になって見かけた人に片っ端から尋ねてみたが、みんな知らん顔で素通りしてしまった。みんなオツにすましていて、私なんかに目もくれなかった。ただ、みんなロウで出来ているみたいに見えたよ。どれくらいの人に話しかけ、どれだけ歩き回ったことか。なのに、誰一人として返事をしてくれなかったし、そこにいるとも思ってくれなかった(スピリットの方から人間が見えても、人間の方からはスピリットが見えないので、知らん顔をしているように思える)。あんたが返事をしてくれた最初の人だ。時折喉に何やら妙なものが引っかかって、その時は喋れなくなるんだが、そのうちまた楽になる。だけど、とにかく何か変だよ、とても変だよ」
博士「いつのことでもいいですから、何か思い出すことはありませんか」
スピリット「毎日のように何かが起きたもんな。あれやこれや思い出すことはあるが、何一つとして明確に思い出せないのだ。一体今の自分がどこにいるのか分からない。こんな変なことは初めてだ」
博士「年齢はおいくつですか」
スピリット「それも分からんのです。もう、かなりの間、忘れてしまっている。誰も聞いてくれる者もいなかったんで、それで自然と忘れてしまったということでしょう。(汽車が通過する音を聞いて)オヤ、汽車だ!久しぶりだなあ、あの音は。少しの間だが、生き返った心地がするよ。どうなってるのか、さっぱり分からんね」
博士「以前はどこに住んでましたか。今はどこにいると思いますか」
スピリット「以前のことは分からんが、今はこうして大勢の人と一緒に、この部屋にいる」
博士「ここはカリフォルニアのロサンゼルスですよ」
スピリット「冗談言っちゃいけない!」
博士「では、どこだと思いますか」
スピリット「どうも、物事を思い出すのがダメでね。時には自分が女になったように思える時すらあるんです。すると、面白くない目に遭うんだなぁ」
博士「どんな目に遭うんです?」 
スピリット「女になると、髪が長くなって、それが垂れ下がると、その面白くないことが起きるんです」(バートン夫人は静電気の治療を受ける時は、いつも髪をほどいて垂らした)
博士「どんなことが起きるんですか」
スピリット「まるで何百本もの針を突き刺されたみたいで、あんな酷い目に遭ったのは初めてだ。もう二度と女なんかにはなりたくない。女になると、またあの酷い目に遭うだけだ。(サークルの中にバートン夫人を見つけて)あの女だ!あの髪の長い・・・・・。(バートン夫人に向かって)あとで覚えてろよ!」
博士「あのご婦人をご存知なんですか」
スピリット「知ってるとも。時々私のことをひどく腹を立てて追い出そうとするんだ」
博士「多分、彼女はあなたにくっついていてほしくないんでしょう。彼女に迷惑をかけているんですよ、あなたの方が・・・」
スピリット「あいつだって、この私に迷惑をかけてるよ」
博士「あなたは今、自分がどんな状態にあるかを理解なさらないといけません。ご自分が今はもう、いわゆる『死んだ人間』になっていることが分かりませんか。今あなたは女性になっておられるのです。衣服をご覧なさいよ。男だとおっしゃるけど、女性の服を着てるじゃないですか」
スピリット「頼むよ、私は二度と女にはなりたくないよ。男なんだ!男でありたいんだ!前からずっと男だったんだ。それにしても、一体なぜこんな状態から抜け出せないのか分からん。あの女が私に出て行けという。それで出て行こうとするんだが、どういうわけか出られない。(ふと博士に気づいて)お前だな、この私にあの火の針を刺したのは!よくやってくれるよ。お前なんかにいてほしくないね。あんな火の針は、金輪際ご免だ。あんなものには一切関わりたくないね」 
バートン夫人「私に取り憑いてどれくらいになるの?」
スピリット「あんたに取り憑いた?あんたこそ私を追い出そうとしてるじゃないか。私と一緒にいたあの女性はどうした(同じバートン夫人に取り憑いていたもう一人のスピリットで、キャリー・ハッチントン)?あの人は私のために歌を歌ってくれたんだが、いつの間にかいなくなっちゃったんだ。さんざん探したんだが見つからない。ご存知ないですか」
博士「あの方はバートン夫人から離れてから、今のあなたと同じように女性の身体を使って私と話をして、それからスピリットの世界へと向かわれました。あなたもここを出た後、同じスピリットの世界へ行くのですよ」
スピリット「私はあの人(バートン夫人)から、あんな叱られ方をするいわれはない。何も悪いことはしていないからね」
博士「もしあなたが女性で、あなたにスピリットが取り憑いたら、それをあなたは好ましく思いますかね?」
スピリット「勿論、それは困るね」
博士「ところが、あなたはそれをあの婦人にしていたわけですよ。あなたは霊で、彼女は生身の人間です。あなたにどいて欲しいわけです」
スピリット「彼女はあの火の針でこの私を苦しめるんだ。火の針は彼女の頭に刺さるのだが、それがこの私の頭に突き刺さるみたいだ」
博士「彼女は生身の身体に宿っています。あなたはスピリットで、我々の目には見えないのです」
スピリット「それはどういう意味だ?」
博士「今言った通りです。あなたという存在は、我々には見えていないのです。あなたは今、私の妻の身体を一時的に使っているのです」
スピリット「ちょっと待ってください。私はあなたの奥さんに会ったこともないし、会いたいとも思わない。言っておきますがね、私はれっきとした男だし、男以外のものにはなりたくないし、あなたの奥さんになるなんて、まっぴらご免だね」
博士「おっしゃる通り、男かも知れません。しかし、あなたの姿は私達には見えていないという事実を理解してほしいのです。その身体は私の妻のものですよ」
スピリット「本当だ、確かに女だ。(衣服に気づいて)こいつは驚いたな。一体どうしてこんな衣服が私の身体に・・・・」
博士「ずっと着てらっしゃいましたよ。ここへはどうやって来られましたか」
スピリット「誰かから『あそこへ行けば何もかも納得がいくよ。そんなにほっつき歩いても仕方ないよ』と言われてやってきたんだが・・・・来てみると女になってる!」
博士「それはほんの一時だけですよ。私の言ってることを分かってほしいですね。あなたはもうご自分の身体を失ってしまったのです。多分、かなり以前にね・・・・」
スピリット「あの女(バートン夫人)のせいだ」
博士「あなたの方こそあの人を悩ませてきているのです。多分随分永いことですよ。それに、他にも迷惑をかけた人がいるはずですよ。お名前は何とおっしゃいますか」
スピリット「思い出せません」
博士「あなたはご自分の身体を失って、これまでずっとバイブルでいう『外の暗闇』の中を彷徨っておられるのです。信仰はお持ちでしたか」
スピリット「教会とは一切関わり合いたくないね。もう、うんざりだ。牧師は、かくかくしかじかのことをしないと、まっすぐ地獄へ行って、そこで永遠の火あぶりにされるのだと説教する・・・・口を開くと地獄行きのことばかりだ。
 そんな説教を聞かされたのは、まだ若い時だった。だが、私が言う通りにしないものだから、教会は私に来てほしがらなくなった。私はそんな話はちっとも信じなかった。地獄へ落とされるほど悪いことはしてなかったよ。その教会を出たあと別の教会へ行ってみたけど、そこでも地獄行きの話ばかりだ。嫌になっちゃった。
 神様だの、聖なるものだの、そんな話ばっかりで、その神様にお金をあげなさいと言い出した。タバコも神様にあげてしまいなさいと言う。なんで神様がタバコを欲しがるのか、なんで僅かしかない私の金を神様にあげなきゃいけないのか、それが分からなかった。
 どうしても納得がいかないので、その教会もやめた。そしてまた別の教会へ行ってみた。するとそこでもさんざん説教されたあげくに、私の後ろに悪魔がついていると言われた。私がその教会に寄付をしないからだ、なんて理屈をつける始末だ。
 ある日、何人かの友達と飲みに行ったことがある。たいして飲んだわけじゃないが、気分良くなった。その時思ったーよし、今度からは教会の最前列に座ってやろう、と。そして、その通りにやった。他の出席者達は、私の魂を救って神様のところへ行けるようにしているのですと言う。牧師は私のすぐ後ろに悪魔がいるなどと言うものだから、ちょっぴり怖くなった。『その悪魔があなたをとりこにしようとしていますぞ』などと言うものだから、後ろを向いて確かめてやろうかと思ったが、それはしなかった。牧師はいつも私に『さあ、前にいらっしゃい、前に。私達が、あなたの魂を地獄から救ってあげましょう。こちらへ来て救われなさい。前に来て改心なさい。生まれ変わるのです』と言った。
 私はしばらく抵抗したが、思い切って前に出てみた。どんなことをしてくれるのだろうと思ったからだ。すると牧師が『ここにひざまずきなさい』と言う。言われた通りにすると、私の頭に手を置いて、みんなで賛美歌を歌い、私の為に祈ってくれた。『さあ、今こそ心を入れ替えるのです』と言う。
 この私の為に、出席していたご婦人連中が入れかわり立ちかわり私の頭に手を置いて、祈ったり歌ったりで、えらく仰々しいなと思った。それから牧師がやって来て、『祈らないといけません。さもないと悪魔がついてまわりますぞ』と言う。私は偽善者にはなりたくないから、その牧師に言ってやったよー『もしも私が罪人だというのなら、私はその罪人のままであり続けて結構』とね。さらに私が『悪魔がそんな人間みたいな存在だとは信じない』と言ってやったら、牧師が怒り出した。こいつは手に負えんと思ったらしい。それでも出席者達はなんとかして私を改心させようとしたが、無駄だったね。
 私はその教会から出て行った。すると何人かの男が追いかけて来たものだから、必死で逃げた。が、そのうちの一人が追いついてきて私の頭を殴った。すごく痛かったね。いったん倒れたが、起き上がった。そこは丘の上で、私はそいつを突き落としてやろうと思ったら、逆にこっちが突き落とされて、ゴロゴロと転がり落ちてしまった。止まったところで気がついたら、大勢の人間がいて、その時から急に楽になった」
博士「多分その時、あなたは肉体から離れたのですよ。つまり死んだのです」
スピリット「死んでなんかいません」
博士「そこはどこでした、丘を転げ落ちたところは?」
スピリット「テキサスでした。歩いたり、走ったりしながらいろんな人に話しかけるんですが、誰一人として返事をしてくれない。まるで棒切れに話しかけるみたいで、こっちの頭がおかしくなった。私の家はどこかと尋ねたんだけど・・・・。
 そのうち例の痛みを感じるようになった。時折痛みが消えてしまうこともあった。そうしてるうちに、一人の婦人に出会ったら『ついておいで』と言うものだから、ついて行ったら、いつの間にか大勢の人に取り囲まれていて、その婦人もその中にいて、みんなが歌を歌っている(患者のバートン夫人は、しばしば大勢のスピリットの歌声に悩まされていた)。時々彼女に話しかけたけど、そのうち突然いなくなってしまった。その後で例の火の針を刺されるようになった。あれは応えたな(バートン夫人への憑依状態が一段と強くなって、その為に電気ショックをより強く感じるようになったことを暗示している)」
博士「あなたは、今はもうスピリットになっていて、私の妻の身体を使って喋っておられるのです」
スピリット「一体どうやって私があんたの奥さんの身体の中へ入ったというのかね?それじゃ、奥さんは取っ替え引っ替え、男に身体を任せていることになるが、それでいいのかね、あんたは?」
博士「結構です。そうやって迷っているスピリットに死後の世界の理解がいくまで貸してあげているのです」
スピリット「これは奥さんの衣服ってわけ?少しの間借りているというわけ?奥さんが私に着せてくれたというわけですか。男なのに女の格好を見せてしまって、情けないね。ここにおいでの皆さんは、私のことをどう思ってるのかなー気が狂ってる?(笑い声)笑い事じゃないよ」
博士「あなたは何も知らずに、暗闇の中にいたのです。そのことを教えてあげようとして、高い世界の方があなたをここへお連れして、一時的にその身体を使わせてあげているのです。バートン夫人から離れさせたのも、その方達です」
スピリット「バートンさんはまた、例の火の針を刺されるのですか」
博士「あなたがバートンさんを離れた時、他にもまだ誰かいましたか。それともあなたが最後でしたか」
スピリット「例の女性も、もう一人の男も出て行った。その後あんたが私に火の針を刺したんだ。必死で出ようとしたが出られなかった。どうしようにも為す術がなかった。地獄の話をしてくれた牧師のことが頭に浮かんだよ」
博士「それとも違いますよ。スピリットの世界へ行ってから、どうしたらいいかを教えてくださる高級界の方達が待っておられます。きっと救ってくれます。ところで、お父さんは生きておられるのですか」
スピリット「知りませんね。もう二十五年も三十年も父親とは会っていません。母親が死んだことは知っていますが、父親がどうなったか、知りません。親戚のことも誰一人知りません」
バートン夫人「昨年の十一月にお会いしましたね」
スピリット「会いましたね。それ以来ですよ、私の具合が悪くなったのは。あなたの一番近いところにいたのは私ではありませんよ。あれは若い女の人でした。ひどく頭痛がします」
博士「今年は何年だと思いますか」
スピリット「1888年か1891年だな」
博士「1920年ですよ」
スピリット「私の頭がどうかしてるんでしょう」
博士「暗闇の中にいらしたからですよ」
スピリット「私は、歩いて歩いて歩き回っていた。そのうち、あの女(バートン夫人)とひっついちゃった。離れたかったものだから、私が蹴ると彼女も蹴り返して、しょっちゅう蹴り合いっこをしていた。
 あれ!あれをご覧よ!私の母親だ!母さん、許してください、母さんの願い通りの人間になれなくて。母さん、この私を連れてってくれないかな?もうくたびれたよ。母さんの世話と助けがほしいよ。連れてってくれますか。ああ、母さん!」
博士「お母さんは何とおっしゃってますか」
スピリット「私の名前を呼んでる。こう言ってるー『ええ、連れてってあげますとも、フランク。長い間お前を探してたんだよ』って。(母親に向かって)私は段々弱ってきました。くたびれ果てました。母が言ってますー『フランク、私達はお互い本当の人生の理解が出来ていなかったんだよ。教わるべきことを教わっていなかったからで、この素晴らしい神の宇宙について本当のことを何も知らなかった。キリスト教の教えは真実の人生とは遠くかけ離れています。牧師は、信じれば救われると説いているけれど、とんでもない。そんな信仰は障害となるだけです。本当の神を知ることです。私達はそれを怠っていました。フランク、正しい理解さえ出来ていれば、こちらへ来てから、どんな素晴らしい世界が待ち受けているか、お前にも分かってもらえるように、母さんも力になりますよ。人生の黄金律(『すべて人にせられんと思うことは、人にもまたそのごとくせよ』ーキリストの山上の垂訓のひとつ)を自分の努力で理解して、これからは人の為に力になり、奉仕しないとダメですよ。
 ねえ、フランク、お前は随分人様に迷惑をかけてきましたね。少年の頃はいい子だったけど、少し元気がありすぎたのね。本当の人生について知らなかったものだから、あたしが死んだら家を飛び出しちゃったわね。家庭がバラバラになっちゃった。お前はあっちへ行くし、他の者はそっちへ行くし・・・。事情は知らないけど、真理を知ることが出来ていたら・・・と悔やまれるわね。
 さ、母さんと一緒にスピリットの世界へまいりましょ。みんなが真理を理解している世界ですよ。愛と調和と平和と無上の喜びが味わえます。しかし、そこでは人のために生きなきゃダメなの。霊界でも学校へ通って勉強するのよ。これまでみたいに人様に迷惑をかけてはダメです。さ、フランク、行きましょう。霊界の奇麗な家へ行きましょう。』ーそう言っています。ありがとうございました。さようなら」

それから数週間後に最後の憑依霊がバートン夫人から離れてウィックランド夫人に乗り移り、監禁されていたことを憤り、先の出て行った仲間達はどこへ行ったのかと尋ねるのだった。

 


スピリット=マギー・ウィルキンソン
患者=バートン夫人

 


博士「ようこそ。どなたでしょうか」(霊媒の手をとりながら)
スピリット「手を握らないで!触らないでください!」
博士「名前は何とおっしゃいますか」
スピリット「マギーです」
博士「マギー・何とおっしゃいますか」
スピリット「マギー・ウィルキンソン」
博士「ここがロサンゼルスであることをご存知でしょうか。どちらからおいでになりましたか」
スピリット「テキサスのダラスです」
博士「ロサンゼルスまでどうやって来られたのですか」
スピリット「ここはロサンゼルスではりあません。テキサスです。ずっと蹴り通しでした」
博士「なぜ蹴るのです?」
スピリット「牢に入れられてるからです(バートン夫人のオーラのこと)。何人か一緒にいたけど、みんないなくなっちゃった。あたしだけ置いて、みんな出て行っちゃった。ずるいわ!」
博士「みんなが行ってるところへ、あなたも行ってみたいですか」
スピリット「別に・・・他の人のことなんか、どうでもいいわ。何もかもみんなで取りっこして、あたしはいつも除け者にされてたんだから」
博士「今の状態が少し変だとは思いませんか。死んでからどのくらいになりますか」
スピリット「死んでからですって!一体あの婦人(バートン夫人)はなぜ、このあたしにつきまとうのですか。あの人はいつも火責めに遭ってるのよ。酷い代物なの。何かの上に乗っかって頭の上に何かを置くと、火の雨が降るの!」(バートン夫人が静電気装置の横の台の上に乗ると、電気ショックの効果を増す為に頭から毛布を被せられた)
博士「こんなところにいて、いいのですか」
スピリット「どこへ行けばいいのですか」
博士「霊界です」
スピリット「何です、それは?」
博士「身体から脱け出た人が行くところです。ただし、自分の身の上のことをよく理解した人に限ってのことですけどね。あなたも何か変わったことが身の上に起きてることに気づきませんでしたか」
スピリット「私は、例の毛布を頭から被せられて火責めに遭うことさえ止めて頂けたら、それでいいのです。まるでバラバラに叩きのめされたみたいな気分になります。あんな仕打ちに耐えられる人がこの世にいるのですかね」
博士「あれは、あなたを追い出すためにやったことです。今は楽な気分じゃありませんか。あの、『発砲』を受けてから後は何をなさっていたのですか」
スピリット「追い出されて良かったですよ。これまでよりは気分がいいですから」
博士「あなたが今使っておられる身体は、私の妻のものであることはお分かりですか」
スピリット「冗談じゃないわ!」
博士「今使っておられるのは私の妻の身体なのです」
スピリット「あなたの奥さんの?バカバカしい!」
博士「着ていらっしゃる衣服に見覚えがありますか」
スピリット「そんなことはどうでもいいことです」
博士「どこで手に入れられました?」
スピリット「泥棒扱いしないでください!警察を呼びますよ。警察署を見つけ次第、逮捕状を出してもらいますからね」
博士「では、マギー、あなたの髪は何色ですか」
スピリット「ブラウンーダークブラウンです」
博士「(霊媒の髪に触りながら)これはブラウンじゃありませんね。この衣服も全部私の妻のものですよ」
スピリット「私のものであろうがなかろうが、私は構いません。私から頼んだわけではありませんから」
博士「死んでからどのくらいになりますか」
スピリット「私は死んではおりません。あの話をするかと思うと、この話になる・・・」
博士「私がお聞きしているのは、あなたが身体を失ったのはいつだったかということです」
スピリット「私はまだ身体はなくしておりません。墓に埋められてはいません」
博士「病気になって、そのうち急に良くなったというようなことはありませんでしたか」
スピリット「病気が酷くなり、そのうち急に楽になったと思ったら、牢に入れられていました。私はウロウロしていましたが、そのうちある女性が私を何かと邪魔立てするようになりました。私の他にも何人かいましたが、例の火責めにあって、みんな出て行ってしまいました」
博士「ロサンゼルスに来られたのはいつですか」
スピリット「ここはロサンゼルスではありません。テキサスのダラスです。もしもここがロサンゼルスだとしたら、私は一体どうやって来たのですか」
博士「赤い髪をした女性と一緒に来られたに相違ありません」(バートン夫人がすぐ側に腰掛けている)
スピリット「彼女には私をここへ連れてくる権利はありません」
博士「彼女もテキサスから来たのです」
スピリット「他の人達はどうなったのですか」
博士「自分の身の上についての理解がいって、無事、霊界へ旅立たれました。あなたもそこへ行くべきなのです。なぜこちらの女性につきまとうのですか」
スピリット「つきまとう?とんでもない!私はずっと牢の中にいるのです。身動きが取れないのです。出ようとして、色々やってみたのです。私を見かけた人達は、私を救い出してやるなどと言っていながら、結局誰も出してくれなかった。私があんまり騒ぐものだから、私から逃げ出したのよ」
博士「多分、その方達が、あなたをここへお連れしたのですよ」
スピリット「私に見えているのは、ここに腰掛けている人達だけです」
バートン夫人「あなたは私についてここへ来たのですね?私を苦しめてどうしようというのです?」
スピリット「私はあなたとは何の関係もございません。あれ!あなただわ、この私を牢に閉じ込めたのは」
バートン夫人「あなたと一緒だった女友達は何という名前でしたかね(同じくバートン夫人を悩ませていた別の霊のこと)?」
スピリット「どこでの話ですか。テキサスでのことですか」
バートン夫人「そうです」
スピリット「あの人はメアリーといいました。もう一人、キャリーというのがいましたけど・・・・」
バートン夫人「キャリーも一緒に来てますか」
スピリット「勿論よ。ねえ、あなたはなぜこの私を閉じ込めといたのよ?なぜ出してくれなかったのよ?」
バートン夫人「私は出て行けと言い続けたじゃないですか」
スピリット「それは知ってたわ。だけど、あなたはドアを開けてくれなかったじゃないですか」
博士「自分の心の中で、この人の身体から離れるのだと思い込めば、それで離れられたのですよ」
スピリット「思い込んで離れるなんて、私には出来っこありません」
博士「スピリットの世界のことが分かってくると、出来るようになるのです。出来ないのはその原理を知らないからです」
スピリット「(バートン夫人に向かって)ねえ、あなたは何のために私をあなたの側から離れられないようにしたのよ?」
博士「あなたは『招かれざる客』だったのですよ」
バートン夫人「あなたがいなくなってくれて、さっぱりしているところですよ」
スピリット「私の方こそよ。あんな牢から出られて、せいせいしてるわ。なぜおとなしく出してくれなかったのよ?」さんざんノックしたのに、出してくれなかったじゃない。(博士に向かって)あなたがあの火の贈り物をくださったお陰で出られたのね。有り難く思ってるわ」
博士「この前の治療の後、出たのですね?」
スピリット「あれを『治療』とおっしゃるのね」
博士「これで夫人の身体から離れられたのなら、立派な治療ですよ」
スピリット「あれで私がどれほど苦しい思いをしたか、ご存知ないのね。特に、あの針で突き刺すやつーあれをやったのは、あなただったのね?大嫌いよ、あんたなんか!」
博士「あなたを出すために、あの夫人にあのような手荒い治療を施さなければならなかったのです」
スピリット「あなたは、あの悪魔の機械を小さな神様みたいに思ってるんだわ。あなたは私にどこかへ行ってほしいと言ったわね。どこでしたか」
博士「スピリットの世界です」
スピリット「それはどこにあるのです?」
博士「肉体を捨てた者が行くところです。ただし、それには理解が必要です。あなたは肉体はなくなりましたが、まだ理解が出来ていらっしゃらない。それであのご婦人に迷惑をかけてきたのです」
バートン夫人「あなたや他の人達に出て頂いた後は、ドアをきっちり閉めて、あなた達の誰一人として、二度と入れないようにしますからね」
博士「自由になったつもりになれば、それで牢に閉じ込められた気分にはならなくなります。肉体をもった人間は思っただけではどこへも行けませんが、スピリットにはそれが出来るのです。あなたは私達には姿が見えません。あなたはスピリットとなっており、一時的に地上の人間の身体を使っているのです。それが私の妻というわけです」
スピリット「前にもそんなことををおっしゃったわね」
博士「どこか変だとは思いませんか」
バートン夫人「マギーマッキンをご存知でしょう?」(もう一人の憑依霊で、バートン夫人は霊視で確認していた)
スピリット「知ってます。メアリーも知ってます」
博士「肉体から出た時はおいくつでしたか。昔のことを何か思い出しませんか」
スピリット「馬に乗って出かけていた時に、いきなりその馬が走り出して、それから何もかも真っ暗になりました。それからのことはあまり覚えていません」
博士「今年は何年だかお分かりですか」
スピリット「そんな質問に答える必要はないでしょう。一体あなたは弁護士?それとも裁判官?一体何なの?」
博士「私は『火夫(ファイアマン)』です。今年が1920年であることをご存知ですか」
スピリット「そんなこと、どうでもいいことです(指を鳴らす)。私の知ったことではありません」
博士「さぞ苦しみから逃れたいだろうと思っていたのですがね」
スピリット「私はただ、あの牢から出たいだけだったのです。今はとても楽で、ここしばらく味わったことがないほどです」
バートン夫人「牢から出して頂いたことを、先生に感謝しなくてはいけませんよ」
スピリット「冗談じゃありません。私に火を放射した罪で逮捕されるべきですよ。まるで頭が狂いそうでしたよ」
博士「お知り合いの方が見えているのが分かりませんか」
スピリット「二人のインディアンの姿が見えます。一人は大柄な方で、もう一人は少女です。カールした髪と青い目をした婦人も見えています」
博士「『シルバー・スター』と呼んでみてください。少女の名前ですよ」(ウィックランド夫人の背後霊の一人)
スピリット「頷いています」
博士「その方達が、霊の世界での向上に力になってくれますよ」
スピリット「私は自信があります。きっと天国に行けます。教会へも通ったし、真面目な女でしたからね」
博士「今見える人達もみんな、あなたと同じスピリットなのです。私達には見えていないのです」
スピリット「でも、同じようにそこにいますよ。その人について行けば、素敵な家に案内してくださるんですって。嬉しいわ!しばらく家をもっていないんですもの。もうあの火責めには遭わないのでしょうね。あの赤い髪の婦人のところへは行きませんからね。神様に感謝します」
博士「さあ、もう自由なんだと心に思って、その方達と一緒に行きなさい」
スピリット「分かりました。行きます。さようなら」

 バートン夫人が初めて我々のところへ来た時は、どんな仕事も出来なかったが、今では大きな商店の事務員をしている。