シルバー・バーチの霊訓(九)

七章 魂を癒す―心霊治療の本質


 ≪心霊治療の本質は〝魂〟に関わることであり、身体に関わるものではありません。魂に受け入れ準備ができていれば、治療は難なく奏効します。摂理としては当然そうなるようになっているのであり、それ以外にはありようがないのです。
 霊的治療は物的身体に宿る魂という容器に霊的生命力を注入する作業です。その生命力は肉体の中の生命の中枢へ向けて仕掛けられる霊的刺激剤であり、回復力であり、再活性力です≫
                                   シルバー・バーチ
 中央アフリカおよびインドを中心に治療活動を続けている二人の治療家が招かれた。二人は Ulyndu(ウーリンドウ)と Amenra(アメンラ)と言う名で知られているが、いずれも仮名である。商業関係の仕事を止めて本格的に治療活動に専念しておられる。奉仕的精神から治療費をいっさい取らないのであるが、その日常生活は〝絶対に裏切らない神の供給源〟の存在を見事に実証している。

 来る日も来る日も治療のための旅を続けていると、時には生活費が底をつき、空腹のためにベルトをさらに締めなければならなくなることもある。にもかかわらず必要なものだけは、お願いしなくても、必ず届けられる。その届けられる経路は驚異としか言いようがないほど思いがけないことがしばしばであるという。

 南アフリカから英国に立ち寄った時に永年の夢が叶ってシルバーバーチの交霊会に出席することができた。二人はシルバーバーチの霊言を生活の指針としてきている。そのシルバーバーチが二人にこう語った。

 「私たちにとって霊の道具として活躍しておられるお方のお役に立つことほど大きな喜びはありません。他人のために倦まず弛まず尽力しておられる方が私の述べる言葉を少しでも役に立つと思ってくだされば、私を地上へ派遣した霊団のマウスピースであることを光栄に存じます。
 われわれはお互い同じ使命にたずさわっております。病める地上世界がみずからを癒す事業を援助し、無謀な愚行に走るのを食い止め、無数の人間の悲劇の根源となっている自己中心主義と貪欲の行為を止めさせ、霊がその本来の輝きと美質を発揮するように導くという責務を負っております。
 この道がラクではないことは今さら私から申し上げる必要はありません。バラの花に飾られた優雅な道でないことは申し上げるまでもありません。苦難は進化を促し、魂を調整するための不可欠の要素なのです。魂が真の自我に目覚めるのは苦難の中にあってこそです。
 人生のうわべだけを生きている人間には、魂が自己開発する機会がありません。地上的方策が尽き果て、八方塞がりの状態となったかに思える時こそ、魂が目覚めるものなのです。

 言いかえれば、物質が行き詰まった時に霊が目覚め、小さな神性のタネが芽を出し、花を咲かせ、内部の美質を徐々に発揮しはじめるのです。苦難はコインの裏側と思えばよろしい。闇なくしては光もなく、嵐なくしては晴天もありません。このことはお二人はすでによく理解しておいでです。
 
あなた方は豊かな恩寵に浴していらっしゃいます。奉仕活動に手を染め、すべてを天命にまかせる覚悟をされて以来、お二人は一度たりとも見落とされたり忘れられたり無視されたり、あるいはやりたいように放ったらかされたことはありません。
 
この道は、他にその恩恵を知る縁(よすが)のない人々に霊力と光明と癒やしをもたらせることになる、雄大な霊的冒険です。宇宙最大の力の道具として働くことは大へん光栄なことです。大霊より強大な力はこの宇宙には存在しません。
 その大霊がお二人に要求しているものは忠誠心であり、協調的精神であり、一途さであり、信頼心であり、そして知識が生み出す信仰心を土台とした絶対的な自信です。

 私から申し上げるまでもないことかも知れませんが、お二人は地上に生を受けるずっと以前からこの仕事を志願していらっしゃいました。またこれも改めて申し上げる必要はないと思いますが、実はそれもこれもまだまだ序の口にすぎません。地上生活は霊としての存在意識を全うするという大目的のために学び鍛える、そのトレーニングの場にほかなりません。
 挫けてはなりません。いかなる事態にあっても、不安の念をカケラほどでも心に宿すようなことがあってはなりません。今日まで支えてきた力は、これからも決して見棄てるようなことはいたしません。絶対に裏切ることはありません。
 もしあるとしたら、この宇宙そのものが存在しなくなります。その根源的なエネルギー、存在の支えそのものが不在となることがあることになるからです。
 お二人は霊力という最大の武具を備えていらっしゃいます。それを、ある時は支えとし、ある時は安息所とし、ある時は避難所とし、ある時は至聖所とし、そしていつも変らぬインスピレーションの泉となさることです。道を過らせるようなことは絶対にしません。縁あってあなたのもとを訪れる人に最大限の援助をしてあげられるよう導くことに専念してくれることでしょう。
 物的な必需品はかならず授かるのだということをお二人は体験によってご存知です。飢えに苦しむようなことにはなりません。渇きに苦しむようなことにもなりません。身を包み保護するだけの衣類はかならず手に入ります。ぜいたくなほどにはならないでしょう。が、進化せる霊はぜいたくへの願望は持ち合わせないものです。
 物的身体にはそれなりに最低限の必需品があります。神はその分霊の物質界での顕現の手段として創造された身体にどんなものが必要かはちゃんとご存知です。迷わずに前進なさることです。
 今日は今日一日のために生きるのです。そして、過去が霊の導きを証明しているように、未来も間違いなくあなたが志願された使命を全うさせてくれるものと信じることです。

 これまで通りに仕事をお続けになることです。病の人を癒やしてあげるその力が、ほかならぬ霊の力であることを理解させてあげるのです。その結果その人が魂に感動を覚えることになれば、それはあなたが霊的な勝利を収めたことになるのです。
 霊が正常で精神も正常であれば、身体も正常です。摂理として当然そうなるのです。身体は召使いで霊が主人です。身体が従臣で霊が王様です。愚かな人間は身体を主人と思い王様と勘違いしております。そういう人の霊は〝支配する〟という本来の立場を知ることがありません。
 勇気をもって前進なさい。もしも私の申し上げることが勇気づけとなれば、その勇気づけの道具となったことを私は光栄に思います。お二人の背後には私たちの世界でもきわめて霊格の高い霊が控えています。
 大へんな霊力と叡智を身につけられたお方で、その悟りの深さがまた深遠です。その方との協調関係を出来うるかぎり緊密にするよう、修養を怠らないでください。

 背負った重荷も、知識から生まれた信仰があれば軽く感じられ、重さが消えてしまうものです。行く手をさえぎる苦難や困難には堂々と立ち向かい、そして克服していくべき挑戦だと思うべきです。きっと克服し、万事がうまく運ぶはずです。
 見た目にいかに大きくても、物的な事態によって圧倒されるようなことがあってはなりません。この物質の世界には、その生みの親である霊の力をしのぐものは何一つ存在しないのです。何ごともきっと克服できます。
 そして心が明るく弾むことでしょう。万事が落着くべきところに落ち着きます。時間は永遠なのです。人間はその永遠の時の流れの中にあって、今という時間、その一瞬を大切に生きていけばよいのです」


 ≪本当の霊的治療が功を奏した時はけっしてぶり返しません。法則は不変です。摂理は完全です。もとより私は霊の美質である慈悲心や哀れみの情、親切心、寛容の心を一瞬たりとも失いたくないと思っております。が、摂理は公平無私であり、自動的であり、不可変であり、神によって定められているのです≫             
                                                               シルバー・バーチ           
   
        ※              ※               ※


 Rose Baston (ローズバストン)女史も人生半ばにして霊的治病能力を発揮しはじめた庶民的な家庭婦人である。三十年以上にわたってハンネン・スワッハワー氏とのお付き合いがあり、その縁で、かつてスワッハーが住んでいたロンドンの邸宅に治療所を開設した。
 つい二、三年前のことで(本書の出版は一九六九年)、その開所式にはシルバーバーチも招かれてお祝の言葉を述べた。久しぶりで面会したバストン女史にシルバーバーチが次のような励ましの言葉を述べた。


 「あなたの治療所の開所式へお招きを受けて祝辞を述べて以来この方、あなたと霊団とのつながりが緊密の度を増しております。治療所は不幸な人々、苦しむ人々を救う目的のために存在しているのです。あなたの人生が常に霊団の導きを受けていることは私から改めて申しあげる必要はないと思います。
 あなたはこの仕事のために生まれて来られたのです。その目的地にたどり着くためにあなたは数々の困難と苦難によって鍛えられ、いばらの道を歩まされました。この仕事にふさわしい人間となるための試練と鍛錬を積まねばなりませんでした。
 さて、これまでを振り返ってごらんになれば、いろいろとあった出来ごとも、みなモザイクの一部であることがお分かりになります。人生には基本的なパターンがあるのです。最初のうちはそれが見分けられませんが、次第に何もかもがそのパターンにそって落着くべきところに落着いていることが分かってきます。
 あなたも今や霊の道具として身体だけでなく、もっと大切なこととして、精神と霊とに慰安と軽減をもたらす仕事にたずさわって、地上生活の目的を成就しつつあることをこの上なく幸せなことと思うべきです。
 これまでと同じく、これからの人生も計画どおりに進展するにまかせることです。決して楽ではありません。私が思うに、これまでの人生がもっとラクだったら、あなたはそれを不満に思っていたはずです。試練の末に勝ち取るほうが、何の苦労もなしに手に入れ、したがって潜在する力に気づかないままで終わるよりもいいのです。
 なのに人間は努力もしないでいて自分にない才能を欲しがり、そのために、せっかく手にしてもそれを有難く思わないのです。その点あなたは永い間ご自分の治病能力に気づかれませんでした。はじめてそのことを聞かされた時はびっくりなさいました。

 病状を診察する能力はさして大切なものではありません。診察は往々にして身体的なことだけになりがちです。が、根本的な原因は身体よりも精神と霊とにあります。早く治そうと思ってはいけません。忍耐が大切です。あなたのほうから霊力を強要しても無駄です。
 霊力というものはその通路に受け入れる用意ができた時にはじめて流入するのです。しかも病状に応じて調節しなければなりません。それはそれは微妙なプロセスなのです。強制的に扱おうとしても無駄です。

 万が一やる気を無くするようなことがあったら───人間なら時には意気消沈することがあるものです───その時はいったん歩みを止めることです。そしてそれまで奇跡ともいえる形で成し遂げられてきたことを振り返って、これだけのことが成就されてきたのなら、これから先もきっとうまく行くはずだという認識をもつことです。
 あなたに要求されることは、そこまであなたを導いてきた霊力に対する絶対的な忠誠心と自信とをもってあなたの責務を全うすること、それだけです。

 あなたなりのベストを尽くすことです。あなたの力の範囲内で出来るかぎりの努力をなさることです。恐れるものは何一つありません。困難はあります。が、それもきっと克服されます。毎朝が新しい霊的冒険の好機なのです。
 これはとても大切なことです。そういう覚悟で仕事に当たっておれば、邪魔が入ることは決してありません。容易でないことは私もよく承知しております。が、忠実な僕がたどる道がラクであることは有り得ないことです。
 お名前はローズ(バラ)でもバラの花壇(※)とはまいりません。魂というものは何かの挑戦を受けてはじめて自我に目覚めるものなのです。その時、居眠りをしていた潜在的な力が表面に出て来て発揮されはじめるのです。(※ a bed of roses 安楽な身分、贅沢な生活のこと───訳者)
 が、あなたはこれまで啓示された光に忠実に従ってこられました。ただの一度もあなたに託された信頼を裏切ることがありませんでした。私をはじめ、あなたの霊団の者はみんな、あなたのことを誇りに思っておられます」


 ≪霊の褒賞は奮闘努力の末に手に入るものです。宝くじのような具合に手に入れることはできません。霊の富はそれを手にするにふさわしくなった時に与えられるのです。霊的開発が進むにつれて自動的に、それまでより少しだけ、多くのものを身につけていくのです≫
                                                               シルバー・バーチ 
          ※           ※            ※      

 心霊治療家の Gordon Turner (ゴードンターナー)氏は病気治療だけでなく、英国心霊治療家連盟の推進者としても有名である。助手の Jo Prince (ジョープリンス)を伴ってはじめてシルバーバーチを訪れた時の感動はひと通りでなかった。シルバーバーチが二人にこう語りかけた。

  「私が永いあいだ地上世界の仕事にたずさわってきて何よりもうれしいのは、霊の僕として働いている同志をここへお招きすることです。あなた方がどうしてもたどらなければならない地上生活のパターンというものがあることは私はよく承知しております。
 外部の世界とは無縁の心の痛み、苦難、苦痛、その他もろもろの複雑な感情があることもよく存じております。支払わねばならない代償があることも存じております。それが時には精神的ならびに霊的に十字架を背負わされることになることがあります。

  しかし、それが霊的進化の道なのです。その道での褒章を得るには奮闘努力しかなく、近道はなく、真の向上の一歩一歩が絶対に後戻りを許されない確固たるものでなければならないのです。もしも気楽な人生を望まれるなら、もはやその人生では他人のために自分を役立てることはできません。
 魂が自我に目覚め、意図された通りに霊的資質を開発し、縁あってあなたのもとを訪れる人々がその天賦の才能によって恩恵を受けるようになるには、刻苦と苦難と修養と節制の生活しかないのです。

  しかし人生には必ず両面があります。陰気で重苦しい、救い難い闇ばかりではありません。光があれば影があり、寒さがあれば温かさがあり、嵐があれば日和があります。そうでないと進歩は得られません。魂が目覚め、霊の隠れた能力と内的な美質が発揮されればされるほど、それだけ神との調和が緊密となってまいります。
  因果律による当然の結果としての報酬があるということです。それは、いかに石ころだらけで障害が大きく思えても、その道は間違いなく自分に約束された道であり必ずや成就されるという、内的な確信です。
  あなた方は自分が成就しつつあることを測定することが出来ません。地上には魂の成長と霊的成就の結果を測定する器具も装置もありません。しかし、あなた方は暗闇にいる魂に光をもたらしておられます。飢えと渇きに苦しむ魂に霊的な食べものと飲みものを用意してあげておられます。
 真の健康を見出す好機を用意された身体と精神と霊に神の力、すなわち生命力そのものを授けておられます。すばらしい仕事です。しかし同時に大へん責任のある仕事でもあります。霊的才能はそう簡単に人間に授けられているのではありません。神からの才能の保管者であるということは、それだけ責任が重いということでもあるのです。   
 悲しいな、あなたが関わっておられるのは人間という気まぐれな存在の集まりです。時には最も緊密な味方であるべき人が最大の敵にまわったりすることがあります。
 同じ目的、同じ大義によって団結すべき人たちの中にあってすら、摩擦と誤解の犠牲となることがあります。が、たとえすべての人間が同じ仕事に従事していても、たった一つの視点から眺めるということは、所詮、無理なのです。

 他人がどう言っているか、どう考えているか、どうしようとしているのか、それはあなたには関係ないことです。大切なのはあなた自身が何を述べ、何を考え、何をするかです。神はあなたに他人の行為や言葉や思想にまで責任は取らせません。あなたの責任は、あなたに啓示されたものに照らして生きることです。光が大きければ、それだけ責任も大きくなります。この神の規約には免除条項というものはありません。
 病気の人があなたのもとを訪れた時、その人は霊的に重大局面を迎えていると考えてください。その人はぎりぎりの決断を迫られているのです。転換期に来ているのです。霊的存在としての本来の生き方を開始するチャンスを目の前にしているのです。病気というのは霊的理解力をもたらすための手段の一つなのです。
 そこでもしもあなたが身体の病気は治せても霊的自覚を促すことができなかったら、あなたの責任ではないにしても、その治療は失敗だったことになります。が、もしも魂に感動を覚えさせることができたら、もしも霊的意識に目覚めさせることに成功したら、あなたは医師にも牧師にも科学者にも哲学者にもできないことをなさったことになります。

 内部の神性のタネが芽を出す、そのきっかけを与えたことになります。神性が芽を出せば、魂が霊力の援助を得て顕現を開始し、真の自我を成就してまいります。訪れる人のすべてを救ってあげられないからといって落胆なさってはいけません。あなたのもとを訪れたということは、その人にとっての好機が訪れたということです。あなたはあなたなりにご自分を役立てることに専念なさっておればよろしい」

 ≪治療家と患者とがそうした方がよいと思うのであれば、時間を定めて遠隔治療を行うことは可能です。しかし、治療能力が発達して一段と高い次元に到達すれば、それも不要となります。治療霊団との連絡がしっかりと出来上がります。そうなると、いつでも精神を統一して自我を引っ込め、代って治療エネルギーを流入させることが出来ます。

その考えに反対するわけではありませんが、たとえば十時なら十時にしか治療エネルギーが届けられないとすると、一つの制約を設けることになるのです≫                                                                                                                                  シルバー・バーチ
           ※          ※            ※

 Kenneth Bannister (ケネス・バニスター)氏はメキシコで心霊治療とスピリチュアリズムの普及活動に献身している有能なスピリチュアリストである。そのバニスター氏がブラジルとフィルピンで盛んに行われている〝心霊手術〟について一連の質問をした。その問答の様子を紹介する。

───心霊治療がどこまで功を奏するかは患者の霊的発達程度、カルマ、その他もろもろの要素がからんでおりますが、ブラジルとフィリピンで行われている外科的な〝手術〟の場合はどうなのでしょうか。
 
 「それもすべて自然の摂理としての因果律の規制を受けます。魂に受け入れ準備が整えばその人は治療してくれる人との縁ができるように導かれていきます。そこでもしも治るべき段階に来ていれば治療は速効的に成功します。
 しかし、どういう形での治療であろうと、たとえば腫瘍が取れて楽になったとしても、それだけで自動的に霊性が目覚めることになるわけではありません。霊的にその治療を受け入れる段階にまで到達したというまでのことです。それは同時に内部の神性の火花が大きな炎と燃えあがる、その点火の絶好機でもあるということです。

 ですから、心霊治療には二つの大切な要素が働いております。一つは、患者が霊的治療を受け入れる準備が整ったということ。それで治療を施す人のところへ導かれて来たわけです。もう一つは、奇跡的な治癒体験によって霊的自我が目を覚まし、霊的意識の光の中で生きるようになる、その絶好機が訪れているということです。
 もしも霊的自我が目を覚まさなかったら、身体的な治癒は成功しても霊的には失敗だったことになります」


───その治療がいわゆる心霊手術によっておこなわれるのは好ましいことでしょうか。

 「〝その果により樹を知るべし〟(マタイ)です。霊力の発現は〝時〟と〝場所〟による制約を受けます。霊媒現象の演出と霊力の顕現はすべて一つの計画に基づく協力態勢での働きかけの一環なのです。
 それは基本的にはそれが適用される民族の身体的、精神的ならびに霊的必要性に合わせて行われます。気候、教育程度、社会環境、理解力を考慮して、最も適切な形を取らねばなりません」

───心霊手術がブラジルとフィリピンだけで行われて、イギリスで行われないのはなぜでしょうか。


 「霊的風土が異なるからです。精神的環境が異なるからです。繊細な霊的影響力に反応しない精神構造には、見た目にハデにつくやり方が要求されるのです。そのことはこのイギリスで百年ばかり前は霊的なことの理解に物理的心霊現象を必要としたのと似ています。
 今のイギリスにはもう必要ではありません。が、教育水準、文化の程度、価値基準が大きく異なる国においては今でも必要です。そこに住む人間の程度に合わさなくてはならないのです」

───でも、イギリスにもこのタイプの手術をしてもらいたがっていながらそれが叶えられずにいる人が非常にたくさんおります。気候というのはそんなに大切な要素なのでしょうか。

 「イギリスの大気よりも伝導性が高いという点において、気候が関係していると言えます。が、それが全てではありません。イギリス人には根本的に合わないという点から言えば、霊的なものも関係しております。問題はその人がどうしてもらいたいかではなく、その人にとって何が最も適切かということです。
 せっかく高い霊的要素を備えていながら、低俗な物的レベルのものばかり求める人が多すぎます。これは進歩、あるいは進化の道ではありません」

───霊媒の純粋性が高ければ高いほど、その霊媒を通してより多くの治癒エネルギーが流れます。このことは心霊手術についても言えることでしょうか。

 「今の表現は正確でありません。純粋性が高いほど多くの治癒エネルギーが流れるわけではありません。純粋でない霊媒でも治癒エネルギーは流入します。純粋性が影響するのはそのエネルギーの〝質〟です。霊力は宇宙の創造主である大霊と同じく無限です。無限であるが故に無数の等級・変異・組み合わせがあります。
 個々の治療家は霊的に受け入れられる段階のものと波長が合います。それよりも高いものとは合いません。受け入れられないからです。ということは、本来ならばそれより低いものも求めようとしないものなのです。 
 治療家が到達した発達段階、霊格によって規制されるのはエネルギーの〝質〟であって〝量〟ではありません」

 ───もし可能ならば全ての治療家が手術を施せるようになることは望ましいことでしょうか。

 「いえ、霊の道具のすべてにたった一つの道が用意されているわけではありません。望ましいのは画一性ではなく、逆に、万能性であり多様性です。霊は無限です。したがって顕現の仕方も無限の可能性を秘めています。その決定的要素となるのは治療家の受容性です。その意味では治療家の気質、育ち、教育、遺伝、環境、さらには前世までも関わっていることになります。

 そうした要素のすべてがからみ合って、治療家を通して注がれる霊力の種類と量とを規制するのです。治療家ぜんぶが同じ道を行くようにはなっていません。バイブルにもこういう言葉があります。〝霊の賜物は種々あるが、霊そのものは一つである〟(コリント)」

 ───心霊手術を要求されてそれが施してあげられない時はどうしてあげたらいいのでしょうか。


 「心霊治療というものを身体上の結果を見せるという点からばかり考えてはなりません。心霊治療は根本的には霊(魂)に関わることです。目的は患者の魂の琴線に触れることです。その魂の受け入れる機が熟していれば、精神も正常となり身体も正常となります。
 本当の心霊治療は霊と精神と身体とが調和して機能するように正しい連繋関係にもっていってあげることです。それが健康であるということの本来の意味であり、健全な状態、融和した状態ということです」


 ≪腫瘍を取り除くことが目的ではありません。本来の目的は魂の琴線に触れることです。その意味で霊のガン患者もいるわけです。そういう人は利己性その他の悪性の腫瘍がしつこく残っていて、それが取り除かれるまでは真の霊的進歩は望めません。地上生活で最も大切なのは霊に関わることです。霊が主導権を握るようになるまでは調和も健康も幸福も生き甲斐も得られません≫                                                                                                                                                                                                                      シルバー・バーチ

 訳者注───本章を翻訳している最中に届いたサイキックニューズ紙(一九八七・六・十三)の一面トップに〝医学校、心霊治療に門戸を開く〟という見出しがあった。イギリスのある医学専門学校が心霊治療家グループに学校内での治療活動を認めたという画期的なニュースである。参考までに大要を紹介しておく。

 「意外な展開の中でミドルセックス医学専門学校が心霊治療家グループに一室を開放して治療活動を許す決定をした。
 またクリーブランドの心霊治療家グループは週一回だけロンドン西部のクリーブランド通りの一室を無料で使用してよいことになった。
 こうした展開の決定的要因となったのは一般開業医連盟と、当医学専門学校講師のコーエン博士の支持があったことである。そのコーエン博士がこう語っている。」

 〝私がはじめて心霊治療家グループと接触したのはそのメンバーの一人であるルース・グリーン女史を通してのことでした。私は条件として医学的治療と抵触する行為はいかなるものも行わないことを確認しました〟  
 博士はまた心霊治療家が魔術や空中浮遊のような手品、要するに〝治す〟という信念以外のものは絶対に持ち込まないことを確約させているという。

 〝私が理解したかぎりでは、心霊治療家に私の学校を使用していただくのは理に適っているように思えました。心霊治療はとても大切です。分別と知性を具えた医師の一人として私は、医師は最大限の広い意味での治療を提供すべきだと考えるわけです。多くの患者が心霊治療で助かっているのですから〟

 コーエン博士は心霊治療の本質を理解するために治療家グループのミーティングに出席させてもらっている。
〝そのミーテングに出席して私は非常な感動を覚えました。孤独感に沈んだ人や世の中から見捨てられた思いをしている人たちに何かしら特殊なものを提供していたからです。また身体的に不自由な人たちも確かに治していると確信します”

 博士もはじめのうちは金儲けが目的ではないかと思っていたという。ところがそこでは治療代を請求していないことが分かり、それがかえって治療を誠心誠意にさせていることを知ったという。

 〝治療家グループの感性の良さと看護ぶりに深い感銘を受けました。ほんとうに人のために尽くしておられ、それで我々も負けずに人のために尽くさねばと決心したわけです。

 正直言って医学校の関係者は当初どうしたものかと迷っておりましたが、心霊治療家にひさしを貸して母屋を取られることがないことを確認した上で、この私が全責任を負うということで踏み切ったわけです〟

 現在までのところ毎週一回水曜日の夕方に治療が行われている。コーエン博士によれば、これまで医師の間から何ら不平不満の声は聞かされていないという。博士は言う。

〝心霊治療を勉強することは医学者にもプラスになるのです。うちの学校がこうした大らかな態度を取ったのは良かったと思っています。いずれ将来は治療の成果について検証がなされるかも知れません。患者を治療前と治療後に診断をすればよいわけです〟

 それについてクリーブランド治療家グループのチーフであるグリーン女史は〝私たちはいかなるテストにもよろこんで応じる用意があります〟と述べ、さらに言う。

  〝ただ私たちは過激なまでに反対している学生には抗議したい気持ちです。彼らの感情的態度が良からぬ雰囲気を生み、治療に悪影響を及ぼすことが考えられるからです。

 別に心霊治療を信じてくれなくてもいいのです。開かれた心をもってくださればいいのです。医学生がテストに参加してくれれば、こんな素晴らしいアイディアはありません。学生に心霊治療の実際を理解していただくチャンスになると思うのです。コーエン博士も学生が見学することを希望していらっしゃいます〟


 現在のところ治療家グループは四人のレギラーで構成されており、すべて英国心霊治療家連盟の会員で、これに時おり他の治療家が参加する程度ということである。